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7:00

ゆうくん、朝だよー。」


…また、あの夢を見た。

俺は目を開けて溢れた涙を手で拭き取る。


「優くんって毎朝泣くの?」


「ううん。泣いてない。涙の分泌が下手くそなんだって医者に言われた。」


珍しいねと言いながら、アカネさんはシャワーに入り始める。

俺はアカネさんの体を洗い、タオルドライをしてクリームの塗る。


アカネ「ありがとう。」


アカネさんはバスタオルを巻いただけでまだ濡れている俺の体に抱きつく。


「濡れちゃうよ。女の子は体冷やしちゃダメだからね。」


アカネ「はーい。」


アカネさんは嬉しそうに微笑んでる。

きっとまた来てくれそうだ。


俺は服を着て手早く荷物をまとめ、外に出れる準備をする。


今日はちょっと寝坊したから事務所に寄る時間ないな…。


アカネ「ああ、優くん昼職してなかったらまだ一緒に入れたのに。」


「ごめんね。まあ、来年には辞めれると思う。」


アカネ「そうなの?この仕事、軸にするの?」


「若いねって言ってもらえる間はそうしようかな。」


アカネ「嬉しいな。来年もいっぱい遊ぼうね。」


「うん。また呼んでね。」


俺は駅までアカネさんを送って店長に連絡をする。


『おはよう。優治ゆうじ。学校の時間大丈夫か?』


「おはようございます。事務所に戻ると遅刻してしまうので昼休憩の時、お金持っていく感じでもいいですか?」


『逃げるなよ。オプション込みの8万、通常ならクレカだけどこの客はいつも現金だからな。』


「ちゃんと持ってきます。ロッカーに財布が入ってるのであとで取りに行きますね。」


『分かった。じゃあな。』


電話を切って急いで学校まで走る。

ここから走って10分、抜け道を極め続けた甲斐がある。


携帯で時間を確認すると朝礼まであと15分。

変に信号に捕まらなければ余裕で間に合う。


湿った暑さが俺のシャツにへばりついてくる。

せっかくシャワーに入っても毎回これだからなぁ。


あと2分。疲れが溜まってたのか脚が重い。

けど、今頑張れば夜は休みだからこの5階分の階段さえ楽しく感じる。


今日は久しぶりに画材を買いに行ける。

今の俺が遅刻しなかったら絶対に画材を買うんだ。


そう思いながら階段を駆け上がると、担任の栄美えみ先生が教室に入る手前だった。


「おはようございます。」


栄美「またギリギリで来たな。」


「すみません。寝坊しちゃって。」


栄美「遅刻しないだけいい。最近、他の生徒はたるんでるから彼方かなたは偉い。」


栄美先生がポケットから汗拭きシートを出して一枚くれる。


「ありがとうございます。」


栄美「入れ。HR始めるぞー。」


俺はもらった汗拭きシートで顔面の汗を拭きながら席に座る。


栄美先生が生徒の名前を呼んで出席をとっていく。


栄美「7番、彼方 夏かなた なつ。」


夏「はい。」


俺は息を整えながら返事をする。


教室は寒いと思えるほどガンガンにクーラーが効いていて体が冷える。

パサパサになってきた汗拭きシートでなるべく多くの汗を拭いてると、隣の席の間宮 沙樹まみや さきがおはようと言いながらハンカチを貸してくれる。


夏「ありがとう。」


沙樹「毎朝大変だね。」


夏「早く暑いの終わってほしい。」


沙樹「まあなぁー…。もう暑いの勘弁だ。」


そう言って、笑顔で話す沙樹は点呼に返事をする。


沙樹は去年の席替えの時に仲良くなった。

入学式から遅刻気味の俺をいつも気にかけてくれてたちょっと目付きが悪いクラス委員。

この頃はよくおにぎりをくれるとても世話焼きでいい人。


栄美「遅刻は…、1人。」


そう呟き、栄美先生は点呼が終えると来週までの予定や夏休みの教室貸し出しの説明を終え、HRは終わった。


今日の昼休みに、早めに帰って来れたら教室の予約しておこう。

そう思い、俺は授業の準備を始めた。




→ Cherry Blossom

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