後日談2
ドアを閉める。――はずが、上手く閉まらない!? ドアのどこかの隙間で何かがつっかえている。
「怪しいセールスではありません、私です、宮野 咲です! 覚えていませんか?」
覚えているし、今となっては怪しさの欠片もない。
俺は一息ついてから、閉じかけのドアを開けた。そこにはニット帽を脱いだ可愛い系女の子――もとい、最低でも一万人以上のファンを持つアイドルが立っていた。
「もう俺ん家には来ないものだと思ってた」
「私もそのつもりでした」
宮野 咲は久しぶりの親友に見せるような柔らかな笑顔を見せた。
「最近になって、少しですが、ここら辺で神の気配を感じるようになりまして。一応、名のある神かもしれないので、挨拶をしに来たんです。ですがまさか、もう一度この家に来ることになるとは思いませんでした」
話している最中も、しきりに奥の部屋を気にしている。
「この家に何の神がいるのか、知らないで来たのか」
「もちろん、知りません。――あなたはご存知なんですか?」
「えーっと、まあ気配的な何かを感じることがあるような気がするだけだ」
「それは変ですね……。視現書を読んだ効果はとっくに切れているはずなのに、どうして神の気配を感じ取れるのか」
宮野 咲はぶつくさと顎に手を当てて悩みだした。あぁ、あのとき読まされた紙は視現書っていうのか。別に興味ないけど。
「とにかくここで話すのもアレだし、中で話さないか?」
「そうですね、それではお邪魔させていただきます」
宮野 咲は居間の畳に正座して、家の中を舐めるように眺めた。安いお茶と大事に保管してあったスナック菓子を出すと、歓迎されたのが嬉しかったのか、満足げだ。
「ありがとうございます」
「はいはい、どう致しまして。そーいやその、足は大丈夫か?」
「足? さっきのですか? 前回ほどではありませんでしたよ」
さっきのというか、前回のなんだけど。見る限り、大事無さそうだな。
ふふっと笑う姿はさすがアイドル絵になっている。のだけれど、危険なことはやめようね。そして学習もしてくれ。うっかり怪我でもされた日には、俺がファンに血祭りに上げられてしまう。
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