第15話
『冗談はともかく。無理を承知で言うのじゃが、もう半年ほどここに居させてもらえぬか。動けるようになり次第、他の祠になりそうな場所を探すでの』
「ああ、もちろん。けどそうなると、俺の電話って」
やっぱり壊れるのか? 形あるものいつか壊れるとはよく言うけど、急速に壊れていくと知っていて指をくわえて見てなきゃいけないのは、心苦しい。
『この電話機器の寿命は少なく見積もって後二年半。わしが半年で削る寿命は、だいたい一年くらいじゃ』
「すぐに壊れるわけじゃないのか」
『つい昔のわしなら一瞬で食べ尽くしていたじゃろうがな。今のわしではそうはならぬ』
「そうか、良かった。一応、それも親からの大切な餞別品なんだ、できることなら長持ちさせてやりたい」
『心得た』
ふう、安心したら腹が減ってきた。
いったん受話器を畳に置いて、買物袋に手を伸ばす。見るも無残なアンパンと、一部放送禁止のカレーパンと、ビタミン系飲料を取り出した。
「今思ったけど、ビタミン系飲料って相性悪いよな……」
見ているだけでブルーになってくる面子だが、それでも食欲は湧いてきた。
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