第10話
「電貧乏神様はここを自分の祠だと仰っていました。電貧乏神様の居場所は、あなたの家しかありません」
「つまり、俺の家に居るってことでいいのか? なら家に入ろう、せっかくだしお前も来いよ」
「分かりました、無駄足だとは思いますが、確認のためにもお邪魔させてもらいます」
家の中を見渡したが、電貧乏神の姿はなかった。狭い家だ、他に隠れられそうなところもない。
「やっぱりどっかに行ったんじゃないのか? それとも呑気にお出かけ中か? ここが居場所だって言うのなら、待ってればいずれ戻ってくるんだよな」
俺はいつもの癖で、部屋に入ってすぐリモコンを拾いエアコンをつけた。二十八度の省エネ設定だ。
「ん、んん!? エアコンが稼動したぞ」
「ご自分で電源を入れたんじゃないんですか」
他人(ひと)を小馬鹿にしたような宮野 咲の言に、俺は頭を傾けて頬を掻いた。
本来であれば、その至極まっとうな指摘に異を唱えたりしないのだけど、今回はそうもいかない。
「だからさ、電源を入れたのになんでエアコンがついたのかって話だよ」
「えっと、すみません、あなたが何を言っているのか……なんとなく分かってしまいました」
宮野 咲の目は素早く瞬かれるたびに、大きく見開かれていく。
「このエアコンは壊れていたんですね? それが何故だか直っている――そういうことですか」
俺は言葉にならない何かを感じながら、頷きで応えた。宮野 咲も言葉を溜め込んだ表情で頷き返す。
「もしかして、他のも直っているのか?」
テレビ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、天井の照明、おまけに目覚まし時計まで、すべてが直っている。
捨てずに取っておいて良かったー! ついでのついでに、十四年物の掃除機も動かしてみた。バイクのようながなり音を立てて稼動した。かと思ったら、二、三秒後に電源が切れてしまった。掃除機だけじゃない、テレビ、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、天井の照明、エアコン、すべてが一斉に動かなくなった!
お、俺は幻でも見ていたのか?
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