24――初めての契約
「名前ですか、いいところに目を付けましたね御主人」
身代わり人形に名前を付けたいと伝えると、モフィーリアは何が面白いのかニヤニヤ笑った。
「いいところって?」
「この人形が御主人に従っているのは、もちろん創造主だからなんですが、正式に主従となるには名前で魂を縛る必要があるんです。と言うより、名前が付く事によって魂が宿ると言っていいでしょう」
魂? 僕は後ろに控える身代わり人形を振り返る。元々こいつを作るのに、ヒトダマを使ったんじゃないのか? 生きていた頃の記憶だってあったし。
「それは単に、スライムボールの材料です。記憶の残骸があるのは珍しいですけど、それでも人格と呼べるほどではないでしょ?」
人の魂を『材料』と言ってしまえるモフィーリアに寒気がするが、確かに三十六人分も人格が残ってたら大変な事になる。ここはもう割り切るしかないか。
「で、私にそれを言いに来たって事は、もう名前は決めてあるんでしょう?」
「え? ええっと……」
一緒に考えてくれるんじゃなかったのか。けど、僕が主人になったのなら、僕が決めてやるのも道理だ。少なくとも、『材料』とか言ってるやつよりは。
「スライムボールを使ったポーン兵だから……
『スラポン』でどうだ?」
「安直ですねぇ。御主人こそ材料から名前取ってるじゃないですか」
うるさいな。身代わり人形の方は何の反応もなく、この名前を受け入れるようだ。
ただ名付ければそれでいいわけではなく、鑑定などでステータスを見る際にちゃんと反映されるようにしなければいけない。人間だと役所に届ければいいが、こういう人造人間の場合は儀式が必要になってくる。要は悪魔契約と同じだ。
「何か、ますます魔術師っぽくなってきたよな」
「ん? 魔術師っぽいのはお好みじゃないですか? それじゃ、御主人らしい方法で契約します?」
僕らしいと言われても、何の事か分からない。きょとんとしていると、モフィーリアが取り出したのは、ネームプレートだった。
「表に人形の名前、裏に御主人の名前を書いてください。これで人形に触れながら名札と合体させれば、契約の完了です」
名札とクラフトで主従契約!? そんなんでいいのか!?
別に魔術師っぽいのでも(かっこいいから)よかったんだけど……
そう思いつつも僕は作業コンパクトを開き、ネームプレートを持たせた身代わり人形と向かい合う。
【契約が完了しました。身代わり人形『スラポン』は『アルバ=エマニエル』の従者となります】
「あれ、この声って……」
物凄く聞き覚えのある声にモフィーリアを見ると、得意げな顔でニヤニヤしていた。
「んふふ、驚いたでしょう御主人?」
「いや、お前が誰からの指令で僕のとこにいるのかを考えれば、それほどには」
……とか言いつつも、他にもこの音声案内 (?)が聞けるパターンがあるのか気になるところだ。
「それじゃ改めて、よろしくな『スラポン』」
「こちらこそ、今後ともお仕えさせていただきます。御主人様」
こうして新たな仲間スラポンを加えて、お化け屋敷攻略への再チャレンジが始まった。
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