13――シューティン☆レディオ①

【皆さん、元気してましたか? 今週も始まりました『シューティン☆レディオ』、パーソナリティーはわたくし、エルフィーネです。

ミーティア城では先日、アダマス第一王女のお誕生日パーティーが開催されましたね。王女様ももう十二歳、ますます美人になられて将来が楽しみですね。わたくし、この日パーティーの参加者からお花をいただいたんですけど、王都では見かけない品種ですっごく素敵なの。ウフフッ!


さて、今週もたくさんのお便り、ありがとうございます。まずは『ふつおた』のコーナーから行ってみましょう。

一通目はラジオネーム・にゃんこメイドさんから。おお、この方はお久しぶりですね!

『エルフィーネお姉様、こんばんは』

こんばんは~】


「きたああああああ!!」


 モフィーリアが突然絶叫したので、大音量に耳がキーンとなった。鼓膜は無事だろうか……


「な、なな何だよ?」

「今、読まれたの、私私! ほら、ラジオネーム『にゃんこメイド』!」


 自分と『ラジオ』なるものを交互に指差すモフィーリアのテンションについていけない。そもそも、ラジオの存在を知ったのもつい先ほどだと言うのに、そこから女性の声が聞こえてくる事への驚きで、内容はあまり頭に入ってこないのだ。


「えっと……ラジオネームって要するに、偽名?」

「身も蓋もない言い方しないでください。これはラジオ番組と言って、ラジオを持っている人全員にお姉様の声を届けられるんです。ラジオネームは、お姉様にお便りを読んでもらう時に使う便宜上の――」

「偽名だろ?」


 ツッコんでやれば、うぐぐと唇を噛みしめて睨まれる。その間にもお便りが読み上げられていく。コーナーごとに内容が振り分けられているが、大抵は他愛のない世間話だ。

 それにしても、にゃんこメイドの比率がやたら高い……と言うより、それ以外がほとんどないと言うべきか。


【ラジオネーム・にゃんこメイドさん。『森の乙女』を流してくださいとの事で、他たくさんの方からもリクエスト来てます。どうもありがとう。この歌はですねー、すごい思い入れがあって、好きな人のために魔女になる事を受け入れた乙女の切ない恋と決意を歌詞に込めたんです。いやー、嬉しい!

それでは聴いてください、エルフィーネで『森の乙女』】


 ポロロン、ポロロン♪

 ら・らら~、とぅ~らら~♪


 弦楽器らしき音と共に、透明な歌声が響き渡る。ビリビリッと全身に痺れが走った。何て言うか……持って行かれそうだ。


「ラ・ララッ、トゥララー♪ にっくみたいのーだけどっ♪」

「うるさい……」


 耳をすまそうとしたところで、モフィーリアがラジオの歌声に合わせてハモッてくるものだから、つい文句を言ってしまう。僕の愚痴などお構いなしに、気持ちよさそうに歌い上げると、恍惚の表情で余韻に浸っている。おかげでよく聴こえなかったじゃないか……


(ん? いつの間にか僕も聴き入ってたのか?)


 ちらりと横を見ると、ニヤニヤと得意げな笑みを向けられてムッとする。つい夢中になってしまったのが恥ずかしい。


【そろそろエンディングのお時間となりました。次回の放送は来週のエルフの曜日になります。宛先は、ミーティア王国メテオ砂漠聖樹、精霊ラジオ『エルフィーネのシューティン☆レディオ』各コーナーまでお寄せください。たくさんのお便り、お待ちしています。

合言葉は、『君をシューティング』! ばいばいっ♪


この番組は、聖樹グレートマザーの提供でお送りしました】


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