11――クラフトゲーム

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『ここがゲームの世界? コージは面白い事言うのね』

『いや、別に本気でゲームの中に入ったとか思ってるわけじゃないって。言ってみれば俺が元いた世界――地球にあったゲームの舞台によく似ている、異世界なんだろう。あまりにも似ているから、そう考えた方が分かりやすいかなってだけ』


 僕はまたしてもコージというおっさんの中に入ってフィンと会話していた。さすがにこうも毎回だと、今が夢の中だと自覚せざるを得ない。


『コージの世界には、魔法はファンタジーの中の存在なのね? ここにもファンタジーはあるけど、本やお芝居とかでゲームとは別物よ』

『フィンのいうゲームって、相手と勝負するやつだろ? 俺のいうゲームは一人でも……対戦や協力プレイできるのもあるけど、とにかく自分が物語の主人公になって、大活躍できるんだ』


 コージによるゲームについての説明で、フィンはそのキラキラした目を大きく見開いた。


『コージが主人公のファンタジー……ここがそうだったなら素敵ね』

『ところがそうならなかったのは、お前もよく知ってるだろ。俺は所詮物語の主人公には向いてないよ。特にこんな……地球のゲームに例えるなら、サバイバルものはさ』

『それじゃあ……コージはどんなゲームならよかったの』


 コージは気付いているのだろうか。フィンの表情が不安で翳っている事に。そりゃそうだ、ここがゲームの世界で、しかも不満だと言われれば、彼を慕ってそばにいる彼女も否定する事になる。


『そうだなー……俺がここに飛ばされる前までハマってたのは、クラフトゲームかな』

『クラフト??』

『材料を集めて、色んなアイテムを作るんだよ。武器や防具……衣食住の全部を。目的は各自の自由だ。村や町を作るもよし、強力な武器を作って冒険するもよし……その先でまた新たな素材を見つけるとワクワクしたもんさ』


 コージの説明は、モフィーリアから聞いたのと同じだ。クラフトとは、こことは別世界から来た概念だったのか。しかも何だかスケールがでかい。村や町も作れる? アレックス兄さんみたいに冒険もできる? マジかよ……


『面白そう! やろうよ、クラフトゲーム』

『あ? だからここは現実だって……』

『そう、現実に魔法が存在する世界なんだよ。今はなくたって、新しい魔法を開発してる魔術師だっている。コージ自身、世界中の魔導書を集めて研究してるじゃない』


 そう言えば、魔法陣の話題も出てたっけな……

 突拍子もない提案に、コージはついていけない様子で手を振ってみせる。


『お……俺が魔法を発明? クラフトゲームを現実化するための? なに言ってんだ、無理だって』

『コージ一人じゃ無理でも、あたしがいるよ。コージみたいに魔法が使えなくても、クラフトゲームができるようになる魔法、二人で作ろう? そしたらこの世界に存在しないような、すっごいアイテムができるかも!』


 フィンの語る夢の大きさに圧倒される。けど――それはあまりにも眩しくて、手を伸ばさずにはいられなくて。コージの手は、フィンの頭に乗っかっていた。


『はは……この歳になって、まだやれるかもって気にさせられちまったな。もしそれが実現できたら、この異世界生活も最高のものになるよ。フィン、魔法が完成したら、お前のために何か作ってプレゼントするよ』

『本当!? 絶対、約束だからね!』


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