1――散々な誕生パーティー
ざわ、ざわ、ざわ。
本日開かれた、ミーティア王国第一王女の誕生パーティーは、国中の貴族の子息令嬢が招待されていた。
かく言う僕もその一人だ。王女と歳の近い者たちばかりなのは、婚約者候補の選定も目的の一つなのだろう。まだ十二歳だと言うのにご苦労な事だ。
アダマス第一王女殿下を初めて目にしたのは、去年城で行われたダンスパーティーでの事だった。その輝くばかりの愛くるしい姿に一目惚れした僕は、何とかその瞳の端にでも映してもらえないだろうかと、この一年考えた。
そして今日、彼女のために誕生日プレゼントを用意したのだった。
「アダマス殿下。本日はお誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。あなたは……どちらのご子息かしら?」
「エマニエル男爵家の三男、アルバでございます」
「三男? お兄様は来られなかったの?」
じろじろと不躾な視線で見られて、居心地の悪さを覚える。婚約者候補を選ぶのだから、婚約者がおらず、歳の近い貴族子息に限られてしまうのは仕方がない。その中でも通常であれば男爵家に王女が嫁ぐのもかなり望み薄ではあるのだが、何せこの王家、近年の戦争のせいで財政がかなり苦しい。それに、いざとなれば爵位を与えるなど身分はどうにでもできるので、とにかく相手がどれだけ裕福であるかが焦点のようだった。
「長兄は既に跡継ぎとして結婚しております。次兄は冒険者となり家を出ました。ですので今日こちらへ伺うのは私となったのです。
「ふーん、で? それがわたくしへのプレゼントってわけ」
恭しく差し出した王女へのプレゼントは、エマニエル男爵領でしか生息しない花で作ったブーケだった。受け取るのを待っていると、ちらりと一瞥した王女はブーケをバシッと払い除け、床に落ちたそれを踏ん付けてみせる。
「ああっ! 何を!?」
「ショボいわ」
「えっ」
呆気に取られる俺を、扇子で隠した口元で嘲笑する王女。
「どうかしたのかい?」
そこに、王女の兄である、クリュシス第一王子殿下がやってきた。
「あら、お兄様。先程、こちらの方から誕生日のプレゼントをいただいたのですけれど、あまりのみすぼらしさについ……ほら」
そう言って王女の指し示す扇子の先を見た王子は、口を歪ませる。どうやら笑いを堪えているらしい。
「これは……いや、失礼。しかし、今日お前に持ってきたと言う事は、少なからず下心があるんだろうに、もうちょっと何とかならなかったのか」
「まったくですわ、オーッホッホッホ」
畜生、畜生畜生畜生!
どうせショボいもんしか用意できなかったよ、どうせ弱小貴族だよ! それだって苦労して用意したんだぞ!!
僕は惨めな気持ちで床に打ち捨てられたプレゼントを回収し、嘲りの視線の中、とぼとぼと会場を後にした。
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