第1章 黒い手紙

  今日は、最悪だった。

 御咲は、低身長で白髪の先生に授業を真面目に受けないと補習と言われたのが相当堪えたらしく先程から「最悪だ」とか「不幸だ」とかを普段より多めに嘆き続けていたのだった。

 不思議な事に、御咲の言葉を借りるなら、その「不幸」や「最悪」は、連鎖する。御咲の住んでいる学生寮の御咲の玄関ポストの中には、色々な広告のチラシが入っていた。それは、ごく普通の光景だ。「魔法とか言いながらこれだけは、アナログだな」っと思いながら御咲は、ポストの中にあるチラシを両腕で抱えるようにして持った時、取り忘れた1枚の紙が宙を舞い下に落ちたのだった。それに気づいた御咲は、その紙を取ろうとした時に後ろに転がっていたジュース缶がある事に気づかずに滑って転んでしまったのだった。いや、正確に言うと気づいていたが、そのまま放置したのが運の尽き、現在の状況に陥っているのだ。おかげで、折角両手に持っていたチラシが床に散らばってしまった。チラシを再度まとめ直しながら、やっとの思いで自分の家の中に、入ることが出来た。テーブルにチラシなどの紙類を置いた。やっと一息つけると思っていた御咲だったが、電気が消えた。停電だ、もう一度言っておこう不幸は、連鎖的に起こる。近くの変電所に雷が落ちたらしい。停電になると学生地区の中枢機関以外が、止まってしまうのがこの学生地区の唯一の欠点だと言われているが、その弱点をカバーするかのように復旧するのは、とても早いのである。5分も経たずに復旧した。復旧した時には、御咲は寝落ちていた。そんな、最悪な一日が一夜明けて今日は、何もする事がないと思っていたのは、ほんの5分前なのだが、今この時をもってそんな気ままに過ごす日々は、白州先生からの電話一本でこの気ままな日常が終わりを告げた。当然、相手は、悪意の欠片さえも心の中にない声で呼び出す。それだけピュアな人間なのだ白州菜奈という人間は。だからこそ、はっきり断れないのだ。断りでもすれば月曜日から白州先生を泣かした幼女泣かし《ベイビークライ》となんとも嫌なあだ名がつく羽目になりそうなので仕方なく自らのプライドのために無けなしの休日を返上して学校へ行くことにした。いつもそんな調子だから私は、不幸だと嘆きずには居られないのだ。そんな中で、テーブルにふてぶてしくも、鎮座している広告の山をどうするか考えながら、昨日の広告の山に目を落とす。すると、広告の山の中に黒い紙が、あることに気がついた。普通の広告なら白や黄色それ以外にも、緑やピンクなんかの色の紙で作られるが、黒色の紙で作られることは、まずないだろう。その紙を手に取ると手紙みたいになっていた。その内容に驚いた。 「名もない魔術士よりあなたに送る あなたの過去を知っている。あなたが知りたいと願うなら自分を探せ!私は全てを知っている」と書いてあった・・・

それは、自分の過去を知ることが出来る機会なので、本来とても嬉しいことなのだが、第一にその嬉しさと同時に自分の過去を知る恐怖が、襲ってくるのだった。第二に現在の時刻9時白州先生が言った学校に集合する時間9時20分これは、どう考えても間に合わないレベルの話だ。私のクラスの中で最も距離が遠いのは私、赤坂御咲なのだ。少なく見積もっても、20分以下の時間にはならない。「よって以下のことから学校遅刻確定っと証明終了」と独り言をつぶやき、状況を理解できなかったようで御咲は、飛び跳ねて「そうじゃない!」と急いで支度をして学校に出掛けて行った。勿論、遅刻してしまったことで幼女待たせ《ベイビーステイ》という違う称号を手にすることができた。「・・・嬉しくない最悪だ」と一人で膝から崩れ落ちた。

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