第7話  新幹線に11時間閉じ込められた話⑦

 これがコロナのない、いつもと同じGWだったら、きっとこんなものではすまなかっただろうと。


 今回は指定席の人はもちろん後から乗った指定席でない人もだいたいが座れていた。

 しかし、これが通常のGWなら通路もデッキも人で埋まり、身動きできないどころではなかっただろうと。


 同時に対応の不慣れさを嘆く人もいた。


 東北で震度5くらいの地震が起こるのは想定外の事態ではない。

 起こることは予想できるだろうし、事実、これまでもそれくらいの地震はあっただろうに、なぜここまで後手後手なのかと。


 後になってニュースを見ると、たまたま津波が起こらなかっただけの危険性の高い地震だったようだが、当時、新幹線に乗っていて、車内で停電やアラームのなかった人は地震の規模を感じていなかっただろうから、そういう感想になるのもわかる。


 オリンピックのことを心配する人もいた。


 東京オリンピックは会場が福島や宮城にもある。

 オリンピックで選手が移動している時、こんな遅れをしたらどうするのかと。


 それもそうだなぁと思いながら、ひとまずSNSを閉じて、ソシャゲをすることにした。

 コンセントとWi-Fiがあるのは本当にありがたかった。


 私の乗っていたはやぶさは、とにかく大宮から仙台が遅かった。

 仙台がもうすぐというアナウンスがあった時には多くの人が早々に降りようと座席から立ち上がった。

 しかし、駅に新幹線が詰まっているため、再び止まったり、徐行になったりする。


「座席にお座りになったままお待ちください」


 そんなアナウンスが流れるが、いい加減疲れた人たちは早く降りようと出口に向かって並んでいる。


「早く降りたい」


 率直な言葉が聞こえる。

 仙台駅に着きそうで着かないので、しまいに小さい子が泣き出してしまった。


 それを聞いた他のお客さんたちは、子供は辛かったよね、可哀想に早く降りたいよねと同情していた。


 車内が子供の声に寛容だった点は本当に良かったと思う。

 小さい子たちだって大声で泣く子はほとんどおらず、耐えていたのだ。


 中にはお腹が空いて、喉が渇いて苦しいのを、泣くという形で訴えた子もいただろう。降りられそうで降りられず早く降りたいと泣くのは、わがままではなく、命の危機が迫っていたのだろうと思う。


 仙台で人が降りると、かなり空いた。

 降りる人の方が多かったが、仙台から乗ってくる人もちらほらいて、大宮から乗ってきた人たちがあれほどイライラしていたのを思い出し、ちょっと心配になった。


「仙台までが詰まっているからそれ以降は大丈夫でしょう」


 家族はそう言っていたが、案の定、遅れた。


 仙台を出る頃にはすでに外は暗くなっていた。

 仙台から盛岡までまた停まったり、徐行したりしながら、盛岡に着いた後、この後はもう早くなるだろうという期待は裏切られた。


「この後からは各駅に停車します」


 各駅停車の新幹線。

 もはや全然、新幹線ではない状況なのだが、同時にこうアナウンスがあった。


「特急券を払い戻ししますので……」

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