第4話 新幹線に11時間閉じ込められた話④

 大宮駅は大きく賑やかだった。

 新幹線に閉じ籠っている時はわからなかったが、外は晴れていて暑いほどだった。


 自分は大宮の駅前にあるビルとかそんなあたりをブラブラしていたが、せっかくだから大宮を楽しもうという家族の話を思い出し、近くのさいたま市立博物館に行ってみることにした。


 もう少し前に動いていたら、埼玉県立歴史と民俗の博物館の渋沢栄一関連の展示を見られたかもしれないので残念だった。

 同様に乳幼児連れの人も、もっと早くにどれくらい時間があるかわかれば大宮公園とかで遊べただろうにと思った。


 いろいろ行ってみたい気もしたが、不案内な土地で移動が多いのは危険だろうと思い、さいたま市立博物館にだけ絞って行ってみた。


 外は夏の様に晴れていて気分がいい。

 ずっと車両に閉じ籠っていたら、鬱々としていただろうから、外に出て良かったと思いながら、大宮の町を歩いた。


 大宮はすずらん通りや一番街というところがあり、雰囲気が川崎に似ていた。


 さいたま市立博物館は無料で、埼玉八景という企画展がやっていたが、常設展示のほうが近現代のものがあって面白かった。


 小さな博物館を見て外に出ると、氷川神社の看板があった。

 武蔵国一宮である大宮氷川神社を拝んでおくかと思ったが、すでに3時になっていたので、あまり遠くに行くのは危険かと思い、のんびり駅に向かうことにした。

 すると、LINEが鳴った。


「15時半に出発するって」


 16時より前に出発することは絶対にない。

 駅員さんからそう聞いていたのに、見事に覆り、慌てた。

 中にいる人にとっては早くなるのは喜ばしいことだと思うが、外にいる人間としては泡を食ってしまった。


 小走りで大宮駅に戻り、改札を通ってホームに戻る。

 ところが額に汗をかいて戻ったら、新たなアナウンスがあった。


「15時半に再開予定とお伝えしましたが、再開予定は16時に……」


 なんとも右往左往するアナウンスである。


 自分は家族が車両にいたので、15時半変更という話を聞けたが、そうとは知らず、16時の10分前くらいのなって戻って来た人もいた。

 もし、再変更がなければ、その人たちは新幹線発車に間に合わず、置いて行かれたかと思うとなかなか怖い事態だった。


 そして、16時過ぎ頃、運転が再開される。


「おばあちゃんにもうすぐ会えるね!」

「ご飯用意して待ってるって言ってたよ」

「これなら予約していたお店にも間に合いそう」


 そんな明るい声が聞こえた。

 この後、また何度も、新幹線が止まることを知らないまま。


 新幹線は再開したからと言ってすぐに通常通り運行できるわけではない。

 前にも他の新幹線がいる。


 なにせ速度がすごい分、下手に車間距離を詰めると危険なので、止まって待つことが多かった。

 私の乗ったはやぶさもしばらく走った後、止まってしまった。


「あれ……?」

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