第1話の4 水魔法の影響

「まあ、まず体験してみないとわからないだろうから、実技から入ろうか。なに、すぐにできるだろう」

「先生はさっき僕に魔術の才能があるといわれましたが、どうしてですか?」

「うむ、その前にホレイショ様は授業の間生徒であるので生徒として呼ぶがいいな」

「はい、よろしくお願いします」

「君が階段から落ちる事故があったが、外傷などは全くなかった。赤ん坊にもたまにみられることだが、君が身を守るために無意識に魔力をまとわせていたのだろう。それで君は魔法を使うのに向いているのではないかと考えた。それで才能があると言ったのだ」

「なるほどわかりました。ありがとうございます」

「ではまず、水魔術から始めよう。水、火、風は暮らしに使われることも多くて生活魔法とも言われる」

「料理とかにも使うということですか」

「そういうことだ」


この世界にはエネルギーとしての電気・ガスは整備されていないみたいだからな


「まずは簡単な魔法体験だ。この魔石メダルを握りなさい」


 真ん中に青っぽい宝石みたいなものが埋め込まれたコインみたいなメダルを渡された。五百円玉より大きいぐらい。

 言われたとおりに右手でにぎり、人差し指だけ伸ばしてメダルにも刻まれている、教えられた呪文を唱える。

 《清流なる水よ出でよ》みたいな意味だ。すると寒気のようなぞわぞわしたものが体に走り手に集まって、人差し指の少し先のところから水が流れた。指先に天使のフィギュアを付けたら小便小僧になりそうな感じで。


「これは魔石に水魔法が込められていて、呪文で魔法がはたらくようになっている」

「ぞわぞわしました」

「そうだ。このコインの魔石には水魔法が込められているが魔力はない。体の魔力を使って水を流れさせるのだ」


 なるほど、魔力というエネルギーを各種魔法術式で変換して魔法として作用させているわけだな。呪文は発動スイッチか。魔力は人間がみんな持っているのかな。


「次に、呪文を使わずに、魔力を込めて水が出せるか試してみよう」

「はい」

「呪文を言った後の、さっきの『ぞわぞわ』した感じを思い出して、それが手の中に集まり、指先から出すのをイメージする」

「はい」


 軽く震えるような『ぞわわっ』とした感じを思い出して右手に集中すると手の中のコインが冷たくなったような感じがして、それを指先に押し出すようにイメージすると、水が勢いよく飛び出した。

「うわっ!」

「初めてでできるとは、やはり筋がいいぞ。じゃあ、このコインを使ってコントロールする感覚を練習しよう」


 カーマ先生が言うには、まず魔力のコントロールすることを覚えるのが重要とのことで、水を弱く出したり、強く出したり、強く出しつつも抑え加減を変えてシャワーのようにしたり霧吹きにするような練習をし、はじめての授業は終わりとなった。よくいう「ウォーターボール」のような水弾はできなかった。先生に実演してもらったが、弱くても水弾が打てればコントロールは合格らしい。

 すっかり疲れてしまったが、体力というよりも、気疲れのような疲れ方だ。コインを返した後でコインがあったときと同じイメージで試してみたら少しだけ水が出た。生まれて初めて魔法を使えたのが嬉しい。その日は夕食後に桶を用意して自主練を繰り返してから眠ったのだった。


 翌朝、何年かぶりにおねしょをしていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る