第1話の3 変わった子/カーマ先生

 私はカーマ・ヒダーツ。

 アベアーラ伯爵家騎士団の魔導士長だ。

 伯爵ご長男のホレイショ様の五歳のお誕生祝いに際して魔術の家庭教師を承り、晩餐にも出席していた。

 晩餐も終わり、彼からお誕生祝のお礼としてご両親である伯爵様ご夫妻にお手紙をという時に、忘れ物があると部屋に戻られた。その際に急ぐあまりに階段から足を踏み外したのか階段下で意識を失っておられた。

 メイドの叫ぶ声を聴き、すぐに回復魔法をと駆け付けたがまるっきりの無傷であった。まだ魔法の手ほどきはされていないはずだが無意識に魔力で防護したのかもしれない。まれに魔法適性が高い子にみられるものだ。とはいえ外傷はなくとも衝撃はあったのか気を失っていたので念のため治癒魔法を施しておいた。


 その後の容態回復を待ち、初回の魔術授業となったわけだが驚くべきことに魔法の仕組みが知りたいと言われたのだ。子供からは早く火の魔法を使ってみたいと言われるのがほとんどで、それ以外だと重い病気や怪我の経験がある子に治療や回復、強化の魔法を使いたいと言われるくらいで魔法そのものの仕組みを知りたいという子はいない。

 いや大人でもいない。変わり者の研究好きな魔導学者やその弟子でまれにいるくらいだ。


 そう、私のような。

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