第4話 最強の子孫

 俺の祖父は最強だ。


 世界で最も強い男だった、らしい。


 親父もたまに来るおじさん達も口を揃えて言う、俺の爺ちゃんは偉大な人だったと。


 よく分からないけど、そんな風に聞かされ子守唄のように英雄譚を聞かされた俺は何時からか爺ちゃんを誇るようになり同時に俺は凄い人間だと錯覚するようになった。


 毎日10時間の訓練と11時間の勉強、そんな側から見たら頭のおかしいスケジュールに疑問を持たなかったのは周りが同じ生活を送っているからだろう。


 だから10歳で全寮制の学校に行き、授業の難易度やスケジュールの甘さに驚愕した。


 そして、そんなスケジュールに悪態を吐く連中が不思議でならなかった。


 アレから5年、俺も色々なことを学んだ。


 俺は特別な人間なんかじゃ無い、ただ努力した分だけ報われる程度の才能を備えているだけ。


 周りは皆んな、俺を天才だと言う。


 正直腹立たしい、努力を努力じゃなく才能の差で片付けられるのが。


 だから、俺はコイツと友達なんだろう。


 万年最下位、努力したって何も報われない学院創設以来の問題児、、、


 努力だけは人一倍、無能の代名詞。


 みんなに馬鹿だ馬鹿だと言われても折れずに努力し続ける微女、伊藤 渚沙


 俺は彼を気に入っている、とゆうかリスペクトしている。


 俺と同じくらい頑張ってる同年代なんて他にいやしない、コイツだけが理解者だ。


 一種依存にも似た感情を、俺は好意と呼んでいる。



「なあ渚沙、知ってるか?」


「? 何を?」


「お前を馬鹿にしてたアイツ、黒上 拓務だ! アイツ人間国の男爵出身らしいんだよ! どうだ? 学校で虐めなんて問題になると思わないか?」


「えぇ、変な事しないでよ伊織くん? そんなの相手にしてたらキリないじゃん」


「、そうか? まあ渚沙が良いって言うなら俺別に何もしないけどさ、でも正当に裁かれるべきだと思うんだよな、、、」


「そうかな、私が要領悪くて周りに置いてかれてるのは事実だしソレを責めるのって普通のことじゃ無い?」


「達観してるな? まあ良いけどね、何かあったら言えよ? ホント」


「うん、それよりさ! 此処わからないんだけど、ココってどう解くの?」


「ん? ああ、コレは、、、」



 幸せな時間だ、俺は本当に幸せ者だ。


 こんなヨキ友達が出来て、そんな人を好きになれたんだから。


 、、、だからこそ、連中は裁かれて然るべき“だった”と思っている。


 爺ちゃんの弟子には人間側の勇者様がいる、あの人に頼めば穀潰し男爵の1人切るくらい楽なもんだった。


 渚沙のお陰でアイツもアイツも、アイツだって今の裕福な生活があるんだ。


 何故、渚沙は侮蔑されねばならない?


 社会ってのは、人身ってのは、本当に愚かだな、、、

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地上最強の師の子孫 福田点字 @tomotyoko

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