第14話  フルーチェ



翌日右側の頬が腫れ上がり 痛みを訴える。

学校にお休みの連絡を入れ、もう一度歯医者へ連れて行く。

「虫歯じゃないから そのうち治るよ。腫れてるから冷やしてあげなさい。

軟膏でも塗っとくか」

馴染みの歯科医師なのだが、専門家がそういうのだから疑うすべもなかった。

家に帰り、言われたように頬に保冷剤を当てさせる。

「手が冷たい 持っとるのやだ」

「それくらい我慢しなさいよ。もっとほっぺ腫れてお月様みたいになるよ」

「え〜!やーだ!」

まぁ5月とはいえ 土地柄まだコタツをしているくらいだから 保冷剤は寒いか

そこでアイスノンに変えてみた。

「風邪ひいた時みたいやねー 熱ないのにねー」

そういいながらアイスノンに頬を当て横になっていた。

「なんか 歯痛いだけなんに 学校休んでしまったね」

「だって そんなに腫れてたら学校行っても 痛い痛いって言っとるやろ」

「うん」

「お昼 何か柔らかいものにするか」

「ゼリーかプリンかフルーチェごいい」

「そんなん おやつやん」

「だってまた痛くなるやろ」

よほど痛かったようだ。

ゼリーもプリンもないがフルーチェの素と牛乳はあるから 

フルーチェにするか

フルーチェを作ってあげるとほんの少しスプーンでスプーンにのせ 口に運ぶ

「食べれそう?」

「冷たくていい感じ」と微笑む

牛乳は嫌いなのにフルーチェは食べれるのよね 

翌日、腫れはひいてないが 歯痛ごときにそう何日も学校を休ませられないのと、本人もバス旅行が間近なので学校に行きたいらしく行かせる事にした。

ただ、変形した顔を友達にみられるのは嫌なのでマスクをしていくとは言っているが。

朝食もフルーチェでいいというので時間をかけて完食し、いつものようにランドセルを肩にかけながら玄関をでる。 

「給食食べれなかったら早退しておいで」

ちょっと心配になりそう声をかけると、

「大丈夫 食べれそうなもの食べるから」

「牛乳出るし フルーチェの素持って行けたらいいのにね」

「やーん 一人だけ恥ずかしいやん」

マスクをしているので表情は正確ではないが多分笑顔で答えてくれた。

そして、妹の手を引きいつものように少し駆け足で出かけた。

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