午後十二時に私は薄カツを作った

隅田 天美

料理の素人(一般人)が読者から紹介された料理を再現してみた実話 その4

 ゴールデンウィーク最終日。

 私は、布団の中でダウンしていた。

 主な要因は微熱と頻繁に起こる頭痛だ。

 お手洗いに行く以外、私はどうにもならなかった。

 コロナウィルスではないが、風邪かもしれない。

 なにせ、こっちは別の場所で書いた二次小説をようやく書き上げのだから気も緩むと言うもの。


 どれだけ寝たのだろう?

 頭が痛くない。

 熱もない。

 しかし、やることもない。


 ふと、ある思いに駆られた。

ーーいまなら、出来るのではないか?


 常連の外訪楠がいほうくす様より以前、紹介された漫画「大市民」の薄カツである。

 材料は用意してある。

 あとは調理のみだ。


 まず、春玉ねぎと春キャベツを薄切りにする。

 ここで気が付いたが私、人差し指ではなく親指で包丁を握る癖があるらしい。

 でも、上手に薄切りが出来た。

 それをボウルに貼った水の中にいれ放置する。

 次にカツを揚げる。


 まあ、揚げなんて私にとって鬼門で過去、生焼けやカチカチになった揚げ物を何度作ったことか……

 そこで私のとった作戦!

 低温でじわじわ揚げる。


 完成したカツを皿に盛り水切りした玉ねぎと春キャベツを乗せ、塩コショウをして食べた。(あれ? レモン汁は?)


 この瞬間。

 TNネットワークの名曲『Get Wild』が脳裏で流れた。

「チープだ、これ‼」

 なんというか、ジャンク感がある。

 酒は飲めないが明らかに酒飲みが好みそうな味である。

 確かに、文字通り「あっ」という間に無くなった。

 個人的には脂肪部分が特にチープに感じた。

 たぶん、春限定の味なのだろう。

 春キャベツも春玉ねぎも美味しい。


 実は、この料理を作るのには渋っていた理由がある。

 私、生玉ねぎが大嫌いなのだ。

 子供の頃に親に無理に食べさせられた生玉ねぎが「苦い、辛い」という印象付けて以来生の玉ねぎは禁忌になった。

 少しでも過熱してあれば食べられるが水にさらしただけでは不安があった。

 しかし、せっかくの紹介料理である。

 ちょっとずるをして(正確には玉ねぎの量を少しだけ減らして)食べた。

 食べられた。

 苦くない。

 辛くない。

 むしろ、甘い。

 脂をさっぱりしてくれる。

 これは新鮮な驚きだった。

「もう少し、玉ねぎの量を多くしても良かったよなぁ」

 後悔したが、もう、カツは無かった。


 外訪楠がいほうくす様、ありがとうございました。

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午後十二時に私は薄カツを作った 隅田 天美 @sumida-amami

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