第140話 闇と刻はまどろむ 6



リディアを見た。

転移魔法が発動する瞬間、間違いなくバルコニーから落ちていた。

手を伸ばしても、届かなかった。いつもこうだ。

危険な時に、いつもあと一歩でリディアに手が届かない。


だが、ここにいるのは間違いない!


「ヒース!極大魔法はまだ待ってくれ!」

「長引けば魔力を消耗するだけだぞ!」

「リディアが砦にいる!転移魔法の中に落ちるのが見えた!」


テレンスと魔法騎士達も含めた攻防の中、近くにいたヒースにそう言った。


「まさか…!?」

「俺がリディアを見間違えるはずない!あれはリディアだった!」


早くリディアを保護しなくては、巻き込まれてしまうと焦っていた。

そして、次々と倒れていく魔法騎士達にテレンスは魔力が暴走しているように見える。


「オズ!行け!早くリディアさんを探すんだ!巻き込まれるぞ!」

「すまん!」


ヒース達に後を任せて一時離脱しようとすると、テレンスが気づき魔法を打ってきた。

間一髪よけはしたが、ヒースは避けきれずそのまま吹き飛ばされ廃墟となった壁が崩れるほど吹き飛んだ。


「ヒース!!」


壁の上に降り立った俺がヒースを見ると同時に悲鳴が聞こえた。


「キャアァ!?」


ヒースが吹き飛ばされたせいで壁がなくなりリディアとライアの姿が現れていた。


「リディア!?」

「…っオズワルド様ーー!!」


リディアも俺にすぐに気付いてくれた。

そして、フェルト様達もリディアに気付いた。


「何故リディア嬢が!?」

「フェルト様、後の浄化はお願いしますよ」


リディアの居場所さえわかればテレンスにもう手加減は必要ない。

フェルト様に後の浄化を任せることにしてリディアの元に駆けつけた。


リディアは倒れて血を流し負傷しているヒースの側に座り込んでいる。

ライアはすぐさまヒースに癒しの魔法をかけていた。


「オズワルド様!ヒース様が…!?」

「ライアがいれば大丈夫だ…話は後で聞くが無事で良かった…」

「オズワルド様…!」


しがみつくリディアを抱きよせテレンスに向かうと、テレンスの禍々しさはひたすら増していた。

明らかに魔力がオーバーフローしている。


「…テレンス、終わりだ」

「お前に勝つ為に魔力を集めたんだ!負けるわけがない!」


フェルト様達は、俺の魔法が来ると察し残った魔法騎士達と障壁を張り、闇魔法に備えようとしている。


気付かないのは、もうまともな思考のないテレンスだけだった。


そして、しがみついたリディアを離さずに極大魔法を発動させ、無数の闇で作り上げた槍が勢いよく降り注ぎテレンスを貫いた。





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