第139話 闇と刻はまどろむ 5
「…リディア様!?リディア様!」
目を開くと真っ暗なところに、目の前にはライア様が私の名前を呼んでいた
「…ライア様?」
「大丈夫ですか?」
大丈夫と言われても…。
そして、ハッとした。
私は刑務所で鍛えられたアリシアに追われていて、アリシアとバルコニーから落ちたはず!
「アリシアはどこですか!?早く逃げないと!」
「落ち着いて下さい。追いかけていた女がアリシアというのですか?」
「そうです!」
力いっぱい頷くと、近くで魔法で争っている音がする。
一体ここは何処なの!?
「…ここは何処ですか!?」
私が叫ぶと同時に空に向かって、大きな光の矢が闇を突き抜けるように飛び、辺りが明るくなった。
それでも、今はもう月が光を差している時間だから暗いのは暗い。
だが、闇が晴れたように見えた。
「あれは…?」
「あの光の矢はフェルト団長の魔法です。闇を払ったんでしょう。…リディア様はそのアリシアという女にバルコニーから庭に落とされて、転移魔法の中に入ってしまったんですよ。ここは北の廃墟の砦です」
「どうしてライア様が…?」
「追われているリディア様を見たレオン様に助けろ、と言われて来ました。間一髪で一緒に転移魔法の中に間に合いましたよ」
まさかレオン様のおかげで助かったとは。
そして、ライア様は大がかりな転移魔法の陣に入る時にアリシアを魔法で吹き飛ばしたと言った。
そのせいか、アリシアが目が覚めた私の側にはいなかった。
そして、いっぱい走ったせいかムカムカして気持ち悪い。
ちょっと吐きそう。
「すぐにここから離れましょう。ここは危険です」
「は、はい!」
ライア様に立ち上がらせてもらい、また走るかと思うと、瓦礫の壁からまたアリシアが現れた。
側にいなかったのに、しつこすぎる!!
何を考えているのか!
刑務所で楽しく運動なりしていればいいじゃない!
私は非力なのよ!
「アリシア!近付かないで!」
「リディア様はブラッドフォード公爵夫人だぞ!手を出せばどうなるかわかっているのか!?」
ライア様と制止しようとするが、アリシアには火に油だったようで、いきなり硫酸のような魔法薬を投げつけてきた。
ライア様がマントで庇ってくれたが、ライア様のマントはジュワッと焦げたみたいに溶けた。
「あんたばっかりいい思いをして狡いわ!!あんたのせいでこんな顔になったのよ!?大体どうして呪いがかからないの!?今度こそと呪いをかけたのにまた跳ね返ってくるし!?この異常者!!」
「誰が異常者よ!!」
誰が異常者だ!誰が!!
この呪い女め!!
街で悪戯程度の魔法をかけたのは、アリシアね!?
せっかくのオズワルド様とのデートを邪魔したわね!?
呪い以外にやることがないのか!?
「呪いがかからない異常者なら直接顔をぐちゃぐちゃにしてやるわ!」
怒りに顔が歪んだアリシアが、また魔法薬を投げようとすると、ライア様が水の塊でアリシアを吹き飛ばした。
「キャアァ!?」
アリシアはドンと壁に叩きつけられて、持っていた魔法薬はアリシアの側で割れ、ジュワッと小さな煙を出していた。
「何考えているんだ…目の前に俺がいるのに、リディア様に手が出せるわけがないだろう…」
ライア様は呆れてそう言った。
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