第138話 闇と刻はまどろむ 4



一階へと降りる階段に、二階にいた参加者達は必死で降りている。

二階からは、大きな衝撃音が響き誰もが逃げようと必死だ。


そんな騒ぎの中、私も遅れず逃げようと広がったスカートを持ち上げ走った。


「早く!皆様こちらです!」


二階の参加者を安全な場所に連れて行くため、魔法騎士が一階から叫んでいた。


その中で胸の開いたドレスにショールを頭から被った女が登って来ていた。


「ご令嬢!二階へは行かず降りて下さい!」

「友人が心配で…!」


甘い声のトーンに聞き覚えがあり、足が止まってしまった。


そして、階段下からウィルが人波をかき分け、叫んでいた。


「リディア様!その女に近付かないで下さい!不審者です!」


ウィルに叫ばれショールを被った女は、私に向かって走り出した。


怖くなり、ウィルに言われるがまま、一階に降りるのを止めて逃げた。


あの甘い声には聞き覚えがある!

アリシアの声にそっくりだった。

いや、アリシアで絶対間違いない!


時間が戻る前に、レオン様に甘えた声で話していたことを忘れてはいなかった。


ウィルは魔法騎士に、あのショールの女を捕まえて下さい!ブラッドフォード公爵夫人が狙われています!と叫んでいた。


「待ちなさい!リディア!!」


待てと言われて誰が待つものですか!


脱獄したと思ったら、こんな大事件まで起こして犯罪の申し子か!?


走る私の後ろをアリシアも追いかけて来る。


せっかく階段まで逃げたのに、また二階を走り、その先にはアレク様の声が聞こえた。


「北の廃墟の砦に飛ばせ!あそこなら破壊してもかまわん!!転移後、すぐに緊急用の第2障壁を発動するんだ!!」


オズワルド様達が行ってしまう!

オズワルド様に助けは求められないけど、アレク様のところまで行けば、保護してもらえる!


「…っアレク様ーー!!」


アレク様に向かって助けを求めるように叫んだ。


「逃がさないわよ!リディア!」

「足速すぎ!」


アリシアは絶対私よりも足が速い!


「刑務所で鍛えられたのよ!」


刑務所では毎日運動があると聞いたことがある。

アリシアに余計な体力を着けないで欲しい!


二階はボロボロで今にも崩れそうだ。

そして、案の定目の前の壁が崩れた。

争っている魔法の被弾でもしたのだろう。


「キャアァ!?」


足を止めるが、逃げるのを止めるわけにはいかない。


アレク様も私に気付き、魔法騎士にリディアを助けろ!と叫んだ。

その言葉に2人の魔法騎士が、駆け寄ろうとしている。


そして、私は崩れた壁からバルコニーに出て、走ろうとした時、アレク様がまた庭に向かって叫んだ。


「転移魔法を発動させろ!!」


その合図と共に、転移魔法の光が庭一帯を包むように立ち登った。


そして、私はアリシアに捕まりそのままバルコニーから庭に落とされた。








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