第126話 金を出せ
昼食の後、リンハルト男爵の邸に出向く準備をしていると、ライア様がいらした。
「オズワルド様、セシルの学費は確保致しました」
「魔法草の温室もか?」
オズワルド様は上着を着ながら聞いていた。
「勿論です。セシル名義にさせました。魔法草の販売の権利と魔法騎士団にセシルの治療費も一括で出させました」
「魔法騎士団に治療費ですか?」
セシルさんではなく?
「あの痣を治癒したのは俺です。俺は魔法騎士団所属ですから、魔法騎士団に治療費を支払うのは当然です。ボランティアでも良かったのですが、金はあるのですから治療費を支払うのは当然です」
学費や温室に廃墟の土地を取ってこいとアドバイスしただけでどれだけ金を徴収してきたのか。
やっぱりオズワルド様に似ている。
ちょっと引きます。
「オズワルド様、私達はリンハルト男爵の邸に行くのは中止ですか?」
「いや、俺は俺の用事がある」
一体何の用ですか?
また、黒い顔になっているし。
オズワルド様はリンハルト男爵の邸では黙って側にいろ、とか言うし。
そして、オズワルド様と二人リンハルト男爵の邸を訪ねると、玄関で男爵夫妻にセシルさんの妹が出迎えた。
「挨拶はいい。さっさと部屋に通せ」
男爵一家が挨拶をすると、オズワルド様は迫力のある態度でそう言った。
男爵一家は午前中にレオン様とライア様が押し掛け、学費諸々徴収されたせいか、すでにぐったりとしていた。
部屋に入るなりオズワルド様はまるで主人のように椅子に座り、いきなり金を要求した。
「金を出せ」
男爵一家はオズワルド様の迫力に圧されたせいか、リンハルト男爵は座らず、立ち尽くしていた。
来るなり金を要求するオズワルド様はまるでリンハルト男爵をカツアゲに来たように見えた。
ちょっと引きます。
「セ、セシルの金でしたら、先ほど話はつきました」
「セシルの金はな。だが、俺には支払われてないぞ。…セシルの顔の魔素を取り除いたのは俺だ。俺は魔法騎士団に所属してないんだぞ。俺の力を安く見ているのか?」
リンハルト男爵はすでに青ざめていた。
「俺は以前娘を大事にしろとも言ったぞ。それが何故こんなことになった。不愉快極まりない」
リンハルト男爵は青ざめたまま、お金は支払います。と怯えるように言った。
「俺は妻と旅行に来たのだ。今回のことで妻にも危険が及んだんだぞ。どう落とし前をつけるんだ?ブラッドフォードを甘く見ているのか?」
オズワルド様、それは悪人のセリフでは!?
今回は私よりセシルさんが危険でしたよ!?
「お、奥様にまで!?」
リンハルト男爵はしまいには青ざめた顔がひきつってしまった。
「い、い、慰謝料を…っお支払い致します!」
「なら、さっさと出せ。はした金は要らんぞ。俺は妻が大事なのだ」
オズワルド様はそう言いながら私を引き寄せた。
引き寄せられると、オズワルド様にもたれるようになってしまった。
いかにも悪人のボスが女を横に置いている構図に帰りたくなった。
そして、リンハルト男爵は邸の金をかき集めたのか、ケース一つに金を詰めてオズワルド様に出した。
「これだけか?」
「…っ!今すぐに準備できるのはこれだけです。残りは銀行に行ってからっ…」
「なら、夕方には邸に持って来い。俺は明日にはこの村を発つぞ」
今にも泡を吹きそうなリンハルト男爵は返事をするだけで精一杯だった。
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