第127話 帰路
そして、またレオン様の邸に帰るとオズワルド様はセシルさんにあのリンハルト男爵から受け取ったお金を目の前のテーブルに出した。
部屋のソファーでお茶を飲み休んでいたセシルさんは、口をポカンと開けて何を言おうかと言葉がないようだった。
「セシル、お前の金だ。受け取るんだ。夕方にはまた金が届くからそれも受け取るんだ」
セシルさんは冷や汗が出るように、ケースの中のお金に固まってしまっていた。
意外と大金ですからね。
そして、レオン様の邸に帰って来た時、使用人にレオン様とライア様を呼んで頂いていたのだが、その二人がセシルさんの部屋にやって来た。
「オズワルド様…これは?」
ライア様がケースのお金を上から覗くように見ていた。
「セシルの金だ。セシルの生活費に使え」
リンハルト男爵の邸で治療費だ、慰謝料だとお金を巻き上げるように受け取ってきたのはどうやらセシルさんの為だったらしい。少し安心した。
「反論は聞かないぞ。セシルの金だ。レオン様の金ではないからな」
レオン様は口を塞がれたように反論出来なかった。
多分レオン様はセシルさんの面倒を見るつもりだったのだろうけど。
「あの…いいのですか?」
やっとセシルさんは、動き出したように口を開き、おずおずと聞いた。
「問題ない」
オズワルド様はそう断言するようにキッパリと言った。
「セシルさん、私達は明日帰りますから何かあればいつでもご相談下さい」
「リディア様もお帰りに?」
「勿論です!私はオズワルド様と一緒です!」
当たり前です。
私はこれでもオズワルド様の妻です。
私達はと言ったではないですか。
私だけ残る選択肢はありません!
私だけこの邸に残ったら新しい事件が発生しますよ!
どうやらセシルさんに懐かれた気がします!
翌日、私達は朝から帰ることになった。
ヒース様はこの村に第1級魔法騎士がいない為に廃墟の後始末で大変らしい。
「ヒース、この仕事が終われば休暇をもらえ。俺の邸へ休みに来い」
「そうさせてくれ。俺は疲れた」
疲れたと言いながらもオズワルド様の見送りに来てくれるヒース様は、オズワルド様と本当に仲が良い友人だと改めて思う。
そして、釘も刺す。
「オズ、寄り道せずに真っ直ぐ帰るんだぞ」
「わかった、わかった」
ヒース様は何だか苦労性に見えた。
そして、帰りの馬車の中で私は言った。
「オズワルド様、旅行はしばらくはいいです。疲れました」
「そうだな。俺も疲れた。しばらくは邸に籠るか?」
「それがいいですね。オズワルド様のお邸は居心地が良いですからね」
二人でそう決めると、帰りは寄り道せずに真っ直ぐとブラッドフォード邸へと帰路に就いた。
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