第112話 レオンのお願い

レオン様の邸に着くとヒース様の案内で応接間に通された。

田舎の邸とはいえ、きっと以前は小さな城だったのだろう。

カントリーハウスでも小さな城はある。

その応接間だ。ソファーは立派で品のいい、えんじ色の猫足で調度品も立派だ。

壁の田園の絵はきっと有名な画家なのだろう。

そのソファーにオズワルド様は足を組み堂々と腰掛けていた。

私はそのオズワルド様に肩を寄せられ隣に座っている。

目の前のレオン様の方が何だか小さくなっているように見えた。

オズワルド様はまるで悪代官のようにレオン様に一睨みしていた。


「オズワルド様、謙虚って知っていますか?」

「知ってるぞ。それがどうした」

「態度がデカイんです。この邸の主人はレオン様ですよ」


小さな声で言ったつもりだったがどうやら聞こえていたようで、レオン様が気まずそうに言ってきた。


「いいんだ」


そして、急に立ち上がったかと思うと、頭を下げ謝罪してきた。

正直あのレオン様が直接謝罪なんて驚いた。


「あの時はすまなかった。一言では言い表せないが申し訳ないと思っている」


レオン様が頭を下げたまま無言の空気が流れ、オズワルド様を見上げると無言の空気を斬るように話し出した。


「…リディアが手に入ったから許してやってもいい。だが、次はないぞ」


どうやらオズワルド様は機嫌がいいように見えるが、次はないと言われた時、レオン様はビクッとしていた。

よほど恐ろしい思いをしたのかと思うほどだった。


「…で、何故セシルがいるんだ?」


レオン様の隣で、気まずそうに座っている女性のことをやっと見えたようにオズワルド様が言った。

どうやら知り合いらしい。


「ご無沙汰してます。オズワルド様」

「どうしたんだ?…それにその顔は…?」


セシルと呼ばれた女性の顔には薄黒い痣みたいなものがあった。

オズワルド様はじっと見て、その後斜め後ろにいるヒース様を見た。

そんなオズワルド様にレオン様はお願いをした。


「こんな頼みをするのは申し訳ないと思うがどうしてもセシルを助けて欲しい」


レオン様は真剣だった。

話を聞くとどうも少なからずあの事件の余波を受けたと思ってしまった。


「リンハルトはどうしている?」

「父は邸にいます。私はレオン様が同情して下さり…今はこちらの邸にいます」

「魔法草はどうした?」

「こちらの邸から通いで魔法草の温室に行っています。レオン様が一緒に行って下さって…」


オズワルド様は考えていた。

レオン様を睨みながら考えていた。


「…セシルは助けてやってもいい。すぐに診てやろう」


セシルさんはパァと嬉しそうな顔をした。

オズワルド様がレオン様の頼みを断るならお願いしようと思っていたが、さすがにこの顔のセシルさんは見逃せないみたいで少しホッとした。

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