第111話 オズワルドとリディアの到着

「リディア、今日はどうする?」


朝からベッドの上でオズワルド様が垂れかかるように頭に唇を添えながら聞いてきた。

休憩もとりながらとはいえずっと馬車に座り正直疲れていた。


「今日は疲れました。ゴロゴロしたいです」

「まだ今日は朝だぞ」

「疲れが取れないんですよ」

「馬車の中でもずっと寝てたじゃないか」

「私は非力なんです」

「もう一泊するか?」

「そうしましょう」


そして、ヒース様の待つ村に着いたのはこれから3日後だった。





魔法草の買い付けに村に着くと、村の入り口に怖い顔の迫力のあるヒース様が仁王立ちで待ち構えていた。


ヒース様の前で馬車を止めオズワルド様が降りるといきなり怒鳴りつけてきた。


「オズ!お前は何をやっているんだ!」

「うるさいな、何なんだいきなり。問題でもあるか?大体ヒースは何故ここにいる?」


怒りのヒース様が気にならないのか、耳を掻っ穿じりながらオズワルド様は飄々と言った。


「お前は謹慎中だぞ!」

「王都には行ってないぞ。旅行するなとは書いてなかったし。それに何でバレたんだ?」

「アレク様が仕事をさせようと連絡をしたらリンクスが魔法草の買い付けに行ったと教えてくれた!」

「謹慎中の俺に仕事をさせるなよ」

「力が有り余っているだろうが!」


村の入り口とはいえ外で怒鳴るヒース様に周りの視線が気になり、馬車に乗るように勧めた。

ヒース様は渋々乗ってきた。


「オズ…対面の座席はどうした?」

「内装を変えた。リディアと乗るからもう要らんし」


オズワルド様の隣にヒース様が座り、二人とも背が高いせいか何だか馬車の中が狭く感じた。


「あの…旅行は不味かったですか?」

「謹慎中です。リディアさんも止めて下さい」

「え、無理ですよ。オズワルド様が私のお願いなんか聞くわけないです。部屋のドアも直してくれないんですよ!」

「部屋のドア?」

「結婚式の夜に続き部屋のドアを闇に沈めました」


ヒース様は項垂れるように下を向いてしまった。


「お前は何をやっているんだ!」

「バラすなよ、リディア」

「じゃあ直して下さい」

「やはり、壁も消すか?」

「嫌です!」


狭い馬車の中オズワルド様にくっついたまま、村を通り抜けていると、村人が見えた。

お店も並んでおり、まあまあ賑わいはある。

しかし、どこに向かっているのか。

不機嫌なヒース様に聞いてもいいのか。


「…オズ、レオン様がいる」

「…何を言っとるんだ?」

「レオン様は今この村が赴任地だ!」


オズワルド様は無言だった。

まあ、会いたいとは思わないだろう。


「リディア、帰るか?」

「そうですね。疲れましたからどこかで休んで帰りましょう」


二人で顔を見合わせ意見が一致するとヒース様が止めた。


「まだ帰るな」

「もう帰りたくなったぞ」

「…邸で休め」

「歯切れが悪いぞ。それに邸にはレオン様がいるんだろ」

「とにかく来い。しばらく俺もいるから、リディアさんにも手出しはさせない」

「…やっぱり帰るか?」


思惑があるような言い方のヒース様にどうしようかと思う。


「オズワルド様が一緒にいてくれますから、私は大丈夫ですよ」

「離すつもりはないが…リディアがそう言うなら行ってやろう」


上から目線のオズワルド様に、大きなため息を吐きながら頭を抱えたヒース様とレオン様のいる邸へと真っ直ぐに馬車は進んで行った。




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