第110話 やって来たのは

こんな夜中に一体誰が来たのか。

そう思いいつも通り玄関を開けようとすると、開ける前に勢いよくドバンッと玄関扉が開いた。


「オズはどこだ!!オズを出せ!!」


思わずビックリした。

物凄く怒った形相のヒース様が現れたのだ。こんな風に叫んでいるヒース様は見たことないかもしれない。いつも冷静でそつなく仕事をこなすヒース様が普通だと思っていたのだ。


「…ヒース様?夜分にどうされました?」

「…っ、ライアか?オズはどこだ!?」


まだ怒ったままでオズワルド様と違う迫力がある。


「オズワルド様はいませんが…」

「隠すと為にならんぞ」

「隠す理由は全くありません!」


何しに来たんだと思うほどわけがわからん。


「…本当にいないのか?」

「だからいません!レオン様がいるのに来ますか。大体オズワルド様は謹慎中では?」

「謹慎中なのに魔法草の買い付けに出たんだ!オズがリディアさんを離すわけがないから絶対一緒に来てるはずだ!」


どうやら、この村に来ているらしい。

オズワルド様にはこの村に滞在する時はアレク様がこの邸での宿泊をいつでもいいと管理人に許可を出している為によくこの邸に泊まっていたようだった。


「レオン様はまだ起きているのか?」

「はい、部屋にいますよ」

「オズが来ることを伝える!部屋に案内しろ!」


案内しろと言うもヒース様はずかずか歩き、俺は後ろから、その廊下を右です。とか言いながらついて行った。


レオン様の部屋に行くと、レオン様も何故ヒース様が来たかわからず不思議そうな顔をした。


「ヒース、こんな夜にどうしたんだ?」

「レオン様、何事もないですか?」

「どう見たってレオン様は元気です!」


そう言うと、ヒース様は先程の剣幕とは違いレオン様の前ではいつものような振る舞いに戻っていた。


「レオン様、オズがこちらに来ると思われます。すでにブラッドフォード邸を出発してもう4日も経ちますから着いていてもおかしくないのですが…」

「オ、オズワルドが来るのかっ…」


何ですか、その狼狽えるような驚き方は。

オズワルド様がトラウマになっているんじゃないでしょうね。


「レオン様、チャンスです。オズワルド様がこの時期にくるなんて千載一遇のチャンスですよ!」

「し、しかし、オズワルドが私の頼みを聞くとは…」


狼狽えている!絶対狼狽えている!

レオン様のその様子はオズワルド様がトラウマなのかと思うほど、狼狽えていた。


「レオン様、セシルの為です。オズワルド様が来るのはきっとセシルを助けろというお導きでは」

「…ライアは頼めないか?」


何でここでチキンなんだ!


「レオン様、人に頼み事をするのなら人を頼ってはいけません。時と場合によりますがこの場合はレオン様がきちんとオズワルド様にお願いをするべきです」

「そ、そうか」


顎に手を添え考え出したレオン様はきっと頭の中で、セシルの為と暗示をかけるように悩んでいるだろう。


ニマニマとレオン様を見てるとヒース様はこちらを睨んでいた。


「レオン様…セシルとはどなたです?」


レオン様はヒース様にセシルのことを少し照れながら話した。


「では、もうリディアさんのことは想ってないのですね」

「リディアを好きだと言ったことはないっ!」

「今さら隠さなくてもいいですから」


ヒース様はハァとため息をつき、呆れるように言った。


「とりあえず、オズは見つけ次第捕まえます」


そして、翌朝早くから、オズワルド様が来るであろう村の入り口に仁王立ちで待ち構えていた。




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