第54話 手柄探し
「いい顔じゃねーか。」
そう言って後ろから俺の頭に緑色液体をかけてきたのはさっきまでぶっ倒れていた残念なやつ、瑛人だった。
「これでも飲んでろ。その程度の傷ならすぐに回復できるぞ。」
更にオレンジ色の液体が入った小瓶を俺に渡した。
ダンの近くにあり、脈を取る。
「息はあるな。この爆弾野郎。」
そう言って自分の影から手錠のような拘束具とまた別の液体をの飲ませて自身の影にダンを入れ込んだ。
「よし!終わりだな。刹那。よくやった。」
そう言って一方的に親指を立て笑顔を向けたこいつに殺意が湧く。
「俺が倒したんだから!なんでお前が頑張って倒した風にしてるんだよ!てめー伸びてただけだから!下っ端に働きでお前は負けてるからな!報告書にちゃんと刹那様のおかげで倒せました。何もやってませんって書けよ!」
もらったオレンジ液体を飲んだせいなのか、
さっきまで戦ってヘトヘトな筈なのに顔の火傷はなくなり、鼻血も止まっている。多分骨折やヒビも大体治ってるようだった。
「俺は奴が油断するのを待って死んだフリをしてたんだ。倒れてる間にお前にやったポーションと同じの飲んでるから万全の体制でお前が死んだら戦おうと…」
「本当に死ぬところだったんだぞ!クソ野郎!」
俺は剣幕で話していたが、瑛人はどこか笑っていた。笑って誤魔化そうとしているのか、任務完了が嬉しいのかはわからない。
「結局。ボスも大したことなくったな。刹那が1人で倒せるくらいなら俺が本気を出せば瞬殺だったな。」
コイツ言い方に少し腹が立つ。
「いや。でもシシウリの復活は終わってるとか言ってなかったか?シシウリなんていないんだけど」
「そうだな。そういえば盗まれた魔獣の核も無いしな。これは目が覚めたら拷問して聞き出して俺もサボってこっち来てるからそれで名誉挽回するか…」
平然と後輩の前でサボったとか言うのが、瑛人のアホだ。
とりあえず、俺と瑛人は休みを取らずにこの洞窟の隅から隅まで何も無いことを確認することにした。
「一通りは見たけど白い草が生えてるくらいでなんもねーな。」
無能こと瑛人はぼやく。
芝のような白い草を踏みつけながら瑛人はそう言った。
「もう帰ろーぜ。瑛人の手柄なんてねーんだから。俺が爆弾魔捕まえました。シシウリ復活は無さそうですって報告しようぜ。」
そう言うわけにもいかないのか俺の提案に首を縦に振らない。
「手柄が欲しいわけじゃ無いんだけどな。なんでわざわざダンはここにいたと思う?」
瑛人はかなり真剣だった。
「シシウリ復活するためだろ?そう言ってたじゃん。」
当たり前じゃ無いかと言わんばかりに俺は答えた。
「じゃあなんでそのことを教えてくれたんだ?」
俺は意味がわからなかった。人が何を考えて発言したなんて考えてたら脳みそが沸騰する。
「ここには何かがあるんだ。俺たちのわからない何かが…」
瑛人の神妙な面持ちに俺は少し不安になっていた。正直余計に立ち去りたい。
「そんなこと後で考えてさっさとここ出ようぜ。」
俺たちが来た道を戻ろうとした瞬間、洞窟は揺れ、共に落石が始まった。
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