第53話 覚醒
ダンは拳を振り翳し、その拳を腕でガードしたが威力が桁違いだった。
拳からの爆風によりガードをつかぬけ、顔面へ拳は突き抜ける。
さらに数十メートルほど吹っ飛び壁に激突。
意識は飛びそうだった。
右腕が折れているのか上がらない。
意識は朦朧。
瑛人はいまだに倒れている。
ダンはとどめを指すつもりなのか、ゆっくりと俺の方に向かってきた。
足音しか聞こえない。
静かな、真っ暗な深海の底にあるような気持ちだった。
殺されるというのに普段ビビり散らしてる俺には以外にも恐怖はなかった。
マトウで過ごして日々が走馬灯のように蘇る。
最初に思い出したのは志麻ちゃんとの任務の日々。瑛人のバカに修業されたり、志麻ちゃんのストーカなら付き合わされたり、ゴリラがウホウホ言ったり、大輔さんに修業つけてもらったり…ゴリラに石投げられて…
『刹那集中しろ。』『刹那くん集中だよ!』『ウホ。ウホウホ。』
「何だ!その光は!!」
ダンの声で再度目を開く。右腕は上がらない。
「瀕死になって覚醒しやがったか!!」
俺の身体には赤黒い神供が纏われていた。
ゆっくりと立ち上がる。
ほのかに冷たいような、暖かいような、身体に纏った神供はゆらりゆらりと俺の周りを服のように取り囲むと、すぐに消えた。
「ふっ。一瞬焦ったが最後の力を振り絞っただけか。焦らせやがって。これで終わりだ!」
再度俺に向けダンは爆風と共に突撃してきた。振り翳した右腕は光だし、また爆風を拳に乗せるのが推測できた。
右腕は動かない。かろうじて動く左腕でガードを試みるがさっきとは違う。
消えた神供が再度、消えかかった炎のように再燃する。
再度神供で俺自身を纏う。服ではなく、衣のように全身に。
ダンの全てを止める。俺が死んでもこいつにオールダウナーを当てる。
ダンの拳は俺に当たるよりも先に、俺を纏う神供に触れた。俺の神供はダンの拳から奴の前身に広がっていく。
高速の物体が突然水に入ったかのように、そこにとてつもない抵抗があるかのように、ダンのスピードは急激に下がり始めた。
しかし、それでも尚まだ拳を避けることはできない。
顔面直撃。俺は纏った人供の上から、拳を浴びる。プロボクサーのパンチはどの速度。目と鼻の間に命中、更にそのパンチが爆破し、首が捥げるくらいの衝撃同時に爆破時独特の熱と光が俺を襲う。
だが、俺は倒れない。
洞窟の天井を仰ぎ、顔を煤まみれ、鼻血を出しながらこう言った。
「オールダウナー!!。雑魚が俺の下まで落ちてこい!」
鼻血と火傷で済む程度の攻撃なんて受けてない。鼻血を拭い攻撃態勢をとる。
握りしめた拳をボクサーのオーソドックススタンスを見よう見まねで構える。
「おまえ………なぜ生きている。」
若干ゆっくり気味に話すダンはかなり驚いていた。
俺の体からは纏っていた人供が消え。
ダンの顔からは余裕が消えた。
先に動いたのはダンだった。
右肩が動き、掌底の腹部を決ようとした。
ダンの攻撃は外れるどころか、逆に顔面にカウンターパンチを喰らう。
次の攻撃も、次の攻撃も、その次の攻撃も、俺は全て交わし、逆に3発顔面を殴ったところでダンは気を失った。
「終わった…。」
勝者は俺、赤塚刹那。
黒焦げの顔面に、鼻血が出て、かろうじで鼻がついているのが分かった。
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