第49話 軽蔑と集結

ガサッっと茂みの中から現れたのは知った顔。

瑛人だった。

「志麻さーん!こっちだよ!こっち!

こっちから志麻さんが通った匂いがする。」


地面に這いつくばり、匂いを嗅ぐ男がそこにいた。

俺は彼を凝視した。軽蔑のまなこで。

「おう。刹那。助けに来たぜ!」

そう言った彼はなぜか一仕事終えたかのように、清々しい顔をしていた。


一瞬は軽蔑はしたものの、助けに来たという瑛人の一言で俺は安堵した。

「杏先輩。コイツは仲間です。援軍が来たみたいです…。」


俺は杏先輩を安心させるためにそう言ったのだか、先輩の表情は険しかった。


「アパパパパ。変態なのだよ!志麻ちゃんの匂い辿って変な男が茂みから現れたのだよ。」

杏先輩、それは正解です。

援軍が来た喜びよりも、女性として寒気がしたのか変態が現れたことに驚きを隠せない。



「おい、失礼だぞ!そこの女!俺はな討伐班エース、木場瑛人だ!決して変態なんぞではない!!嗅覚が人よりも優れているだけだ。」

瑛人は息を吐くように嘘をつく。


「ごめんなのだよ。匂いとかいうからてっきり新たな変態かと思ってしまったのだよ。」


瑛人が出た茂みから志麻ちゃんも合流。

「杏さん。こいつは私のストーカ瑛人よ。気をつけて。色々やばい奴だから。」


はっとした瑛人の表情を杏先輩は見逃さなかった。


「やっぱり変態なのだよ‼︎」

杏先輩はファイティンポーズを取るが瑛人はなぜか嬉しそうだ。


「志麻さんが俺を呼んでくれた。今日俺は死ぬのか。こんなにいい日になるなんて夢にも思わなかった。」


何言ってるんだコイツ。

志麻ちゃんの影に潜んで数ヶ月って…仕事やれ。


「刹那くん。瑛人は私の影に潜んでただけで援軍じゃないから…安心しないで。」


俺は落胆した。半分は殆ど変わらないこの状況に。半分はもちろん瑛人の変態性に。


そこから俺たちは情報交換をした。

ロベルトさんに会ったこと。敵は星読みという組織であること。そしてこの場にある敵の人数、目的、捕虜のトルファのことを。

また、瑛人と志麻ちゃんからは侍を倒したことを聞いた。


状況は確実にいい方向にに進んでいる。

特に瑛人に出会えたのはかなりいい状況だった。

瑛人は自分の影の中に武器や食糧だけでなく、日用品まで持っていたからかなり助かった。

変態だか、かなり使える奴だ。


俺たちは瑛人の持ってきた携帯食糧と水を片手に作戦会議をすることにした。



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