第44話 勝負に反則なんて存在しない。

能力が使えない。

神供を感じない。


「何やりやがった…。」

俺はトルファを睨みつけた。


「フッフッフッ。私の能力はレンジチェンジ。能力のレンジを変えられたお前は、能力が使えない‼︎」

指を刺し、ドヤ顔で、キメ顔で、俺に言い放ったこの女は、普通に種明かしをしてくれた。


「ドレスとはセカンドレンジ特有の技術を私に見せたのが運の尽きだな!!今のお前はた只の無能だ!」


ペラペラと自慢げに語るこの女に俺の能力は封じられてしまったと言う訳だ。


しかし、能力が使えないと言うのは無能というわけではない。確かに弱体化はしているのだが、能力を使わない分普段通り、肉弾戦を行えばいいだけだ。


そこから俺たちは殴り合った。

能力を使っているせいか、トルファはスタミナ切れを起こしているようだったので、俺のパンチもそこそこ当たり始めた。


「はぁはぁはぁ。お前…中々つえーな。」

「君も、中々やるじゃないか。褒めてやるよ。しかし、女性の顔を殴…」


俺は容赦なく殴り続けた。3発ほど。

勝負に性別の話を出した時点でフェアではないと思うからだ。


相手も武器がないのか、ただの泥試合。

悲しいことに俺は自分よりもタッパの低い女とほぼ互角の勝負をすることになった。


「くそっ。卑怯者め!人が話している最中に不意をつくとは‼︎」

そういうとトルファは俺から間合い取った。


そして、肩で息をする彼女は、ポシェットのようなものから子瓶を取り出し、それを一気に飲み干した。


俺に殴られ、腫れていた彼女の顔がみるみる治っていく。

「ポーションだよ。君たち異世界人は知らないだろ。私はこれを後3本も持っている。正々堂々出来なくて君には悪いが、私の体力は後3度ほど回復できる。君h」


容赦なく殴った。5発ほど。

そんなチートアイテム、ズルすぎるからだ。


「フッフッフッ…。一度成らず二度までも…このクソやろう。人が話している時に不意をつくとは‼︎お前ぶっ殺してやる‼︎」


俺は悪くない。

隙を見せた方が悪いのだ。


だが,俺も身体がいうことを効かなくなってきている。

はっきり言って腕が重い。瞼が開かない。


「フッフッフッ。早くくたばれ。卑怯者‼︎」


足から頭の先まで電気が走った。

ぶっ倒れ、下腹部から何かが上がってくるような気がした。

瞼はほとんど開いていなかった。

そう…あの女は俺に金的に蹴りを喰らわせたのだ。


背中から崩れ落ちうずくまる俺。

立ち尽くすはボロボロになったトルファ。


俺は敗北した…


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