第43話 ドレス
杏先輩は1人トルファと名乗る女へ向かっていった。
「ポカンなのだよ!!」
擬音を出さないと動かないのか、杏先輩は声に出し、彼女の額目掛けて殴りかかった。
残念ながらトルファは殴りかかった先輩の手首を掴み、そのまま投げ飛ばした。
「杏先輩‼︎」
俺はつい、先輩のことを呼んだが返事は返ってこなかった。どうやら道に頭をぶつけて失神しているみたいだ。
「フッフッフッ。この程度の雑魚が私に勝とうなんて…身の程を知ってほしいな!」
トルファは杏先輩を見下していた。
「さぁ。男、残るはお前だけだ。」
トルファは両手を構えて俺にジリジリと近づいてくる。
トルファの手が少し神供に覆われた。
能力を発動しているのだ。
俺は以前行った瑛人との修行を思い出していた。
俺は知っている
“神供は神供でガードできる!”
修行を思い出し、手に神供を…いや、奴の攻撃がわからない以上全身に神供を纏ってやった。
「ほう?お前”ドレス”が使えるのか。なかなかやるじゃないか。」
「なんだ?ドレスって?」
「その技の名を知らないのか。フッフッフッ。教えてやろう。神供を纏って防御をする2ndレンジが扱う技のことだよ。」
知らなかった。そんな技だなんて。誰も教えてくれなかったからだ。
敵が知っていると言うことはこの女は俺よりも強いんじゃないだろうか。そんな気がした。
「才能なのか、誰かに教わったのか知らないが、いきなり“ドレス”を見せてはダメだ。技には使い所があることを見せてあげよう。」
そういうとこの女は突然俺の腹に1発パンチを喰らわした。
ドレスをしているせいかそんなに痛くはないが、殴られた腹部の神供はそこになくなっていた。
「神供は神供で破壊できる。知らなかったのかい?すぐに守らないと2発目は喰らうことになるぞ!」
再度、俺の腹に打撃を入れられた。
鳩尾(みぞおち)から胃、食道を通って衝撃が走る。
志麻ちゃんもそうだが、覚醒者になるだけで男女の力量差はほぼなくなるようだ。
俺も強くなっているはずだが、口から何かが吹き出しそうになった。
「離れろ。」そう言って俺はトルファを跳ね避けた。しかし、トルファには俺の手は全く触れていない。うまく避けられた。
どうやら俺はこの女より戦闘力がないらしい。早く能力で弱らせないといけないようだ。
とりあえず手数だ、俺は掌だけに神供を集め、オールダウナーを喰らわせることだけを狙う。
右、左、右、蹴りを混ぜての攻撃。
この女は間合いの取り方が上手い。
カウンターをその間に3発もらった。
「どうした?そんなに私に触れたいのか?能力も使えないのに。」
初めはトルファの言っている意味が分からなかったが理解はすぐにできた。
俺の神供は掌には集まっていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます