第40話 [番外編1] 絶空
ビキッ。ビキッと音を立てて地面が割れる。
亜空間にひびが入っているのだ。
「嘘だろ。影は消したんだ。戻ってくるはずがない。」
ビキッっと音を立て広がる亀裂に瑛人は確信した。
「志麻さんは逃げてくれ。アイツが来る。」
「瑛人。次は私がやる。」
瑛人は刀を構え、オーガを迎え撃とうとする志麻の前に立った。立ちはだかった。
「ダメだ。俺は、俺はあんたが傷つくのを見たいくない。」
バキッと音を立て、腕が現れる。
「頼む。逃げてくれ。」
腕は地面を掴み、ヒビが開き大きくなり、頭が現れる。
「木場よ。貴様やってくれたな。草原の影でワシを落とすとは。まるで落とし穴ではないか。お前の影はまさに沼、比重の軽い草は影の上に残っておったのか。解せぬな。」
「お前どうやって影から出てるんだよ。ふざけんな。」
「容易いとこよ。お前の影が時間を経つにつれ小さくなったから。神供を纏った拳で叩き割っただけよ。」
瑛人は今まで多くの魔獣、魔人と戦ってきたが2度も影からでた奴は初めてだった。
半分ほど体が出たオーガは体を再度変化させた。
背丈はオーガに変身する前と同じぐらいだが、その威圧感、迫力は巨大だった時の倍以上だ。
そして、体を影から全て出し、バキバキと体を慣らした。
「この姿を見せるとは思わなんだ。かっかっか。
おぉ。女。お主も出てきたか。だがワシはもうお主など後でいい。まずは瑛人貴様だ。」
頭には角が一本。体は赤く、目は黒く、金の瞳。
瑛人は頭を持たれたまま地面に叩きつけられた。
一瞬の出来事で何が起こったのか分からない。
わからないながらも瑛人は自分の影に入ろうとしていた。
「貴様の能力は厄介だのぉ。また影か。」
影の上に叩きつけられたため瑛人は地面に直接、衝突はしなかった。
「ん?抜けんな。唯の影に戻したか。」
腕一本を自分と共に封じた。
勢いがつかなければ流石のオーガでも大きな力を発動できないと思ったのだ。
「だが、甘い。」
オーガは反対側の腕に神供を纏い、影を力一杯殴ったのだ。
暖簾に腕押し。影は沼のようになり、再度腕を沈ませる。影の中に衝撃が走る。
「当たってはおらぬが、拳圧は効いたかのぉ。」
両腕に影に突っ込み、身動きが取れないように思える。
腕が抜けないということは瑛人は影の中で生きているということだ。
瑛人はまだ頭を握られてオーガは握り潰すことも容易いだろう。
だが握り潰せない。どんなに力を入れても。
「なぜだ。こんなにも力をかけておるのに。硬いではないか。」
瑛人は神供を纏い、身体強化をしていた。
オーガはどうすることもできない。腕を抜くことも、頭を割ることも。
すーっと冷たい視線が背筋に走った。
「なんだ。これは。このワシが恐るほどの神供が纏われておる。この技は知っておるそ。我が友、狼牙の技……」
後ろには志麻がいた。志麻の全ての神供を注ぎ斬撃を放つ。
……絶空……
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