第39話 [番外編1] 追い詰められた鬼
オーガは大木を槍のようにぶん投げてきた。
大木の雨を逃げて逃げて逃げて森を抜けた。
何もない広がる草原。
雲はない。
大きな木や、岩もない。
「かっかっかっ。逃げてこんな何もないところに来るとは馬鹿な奴め。お前の能力では最悪の場所じゃないか。」
「……」
瑛人は何も話さない。
「お主の能力はズバリ、2ndレンジ、影に入ると言うという能力だろう。あの女を助けた時も、ワシに抱きついた時も、お主の手は地面についておった。ネタがわかれば大したことはない。影とお前の手に気をつければいいんだからな。」
「……」
瑛人は何も話さない。
「ネタもバレ、血も流しすぎ立つのがやっとか。それでは死んで貰おう。お前を殺せば能力も解け女も出るだろ。」
オーガは拳を構え、勢いよく飛び込み、瑛人の目の前で落下した。
影の中へ。
「残念だったな。お前は間違っている。2ndレンジは手で触れた場所に効果を発揮するんじゃない。生身で触れた者に対して効果を発揮するんだ。それと俺の能力は、繋がった影全てに効果を発揮するんだよ。この草原の影にな。」
そう言ってた彼は素足を地面に蹴りつけた。
「……ここはどこだ。影の中か。足に触れる感覚がない。暗い。暗いぞ。ワシは負けたのか。」
ぐゔおぉぉぉぉっと音が地面から聞こえた気がした。
影に閉じ込めた。もう安心だ。
「志麻さん。今出しますよ。」
そう言って瑛人は志麻を自分の影から引っ張り出した。
「瑛人……。」
「志麻さん。生きててよかった。」
瑛人の安堵が溢れ、志麻はボロボロの瑛人を見つめるしか出来なかった。
今まで徹底的に無視をしていた彼女にとって、瑛人とまともに話すのは数年ぶりだった。
「瑛人……。あり…」
ぐぉぉぉぉぉー。
地響きに似た、男の声、化け物の声か。
ぐぉぉぉぉぉー。
なんで声が聞こえるか瑛人にはわからなかった。能力は解いたはずなのに。
ぐおぉぉぉぉーー
ビキッ。ビキッと音を立てて地面が割れ始めた。
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