第38話 [番外編1] 限界突破

シュルシュルー。ドカン。



どこからかともなく、バズーカ砲が武蔵の顔面にヒットした。

瑛人は吹き飛ばされた木々の上から発砲音と共に現れた。


「死ぬわけないだろ。そんなもんで。」


「あぁ。そう期待しておったわ。」


バズーカ砲で目玉がえぐれてはいたが、既に修復が始まっていた。


「バズーカ砲が多少は効く程度か。タフなやつだな。」


「お主こそ。その傷でそれだけ逃げ隠れできるなら大した奴よ。カカッ」


いつのまにかオーガの右腕は元に戻っていた。

「右腕は治った。木場よ。ワシの力を見せてやろう。」


オーガはその巨大な腕で自分の数倍はあろうかという岩を持ち、瑛人を目掛けて投げてきた。

岩は、周囲の木々や土砂は、砂煙を立て地面を割った。

瑛人は姿はない。


「鬼ごっこか。逃げてばかりとは情けない。」


獣のように、鼻をヒクヒクさせ、瑛人を探す敵はまさに化け物、オーガそのものであった。

倒れた木を持ち、隠れている瑛人を目掛けて投げてくる。


「オーガは鼻も聞く。お前の血の匂いはもう覚えておる。」


飛んでくる木々をよけ、瑛人は真剣に自分に何ができるか考えていた。

瑛人はさっきの切られた刀傷で意識は朦朧としていた。


なんで俺こんなのと戦ってるんだ。

逃げちまえば、楽なのにな。

あんな化け物、普段なら簡単に俺の能力に沈めるのに。沈めよ。空気読めよ。


あいつを沈めるほどの力もうないんだよな。

休みてぇ。血が足りねぇ。


瑛人は自分の影が視界に入るとそこには志麻がいることを思い出す。


やる気しか出ない。好きな女のために限界を越えるなんて。


「おい。そこだ。」

オーガは大木を槍のようにぶん投げてきた。

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