第33話 戦略的逃走

「絶空‼︎」

聞き覚えのある声と共に斬撃が侍を襲った。


侍は振り下ろしていた刀を即座に構えて斬撃を受けかわした。


「何奴‼︎」


俺との距離をとり、再度構える侍。


刀を構え、俺との侍の間に入る志麻ちゃんがそこにいた。


「刹那くん。白峰さん大丈夫?」


俺は心の中では泣いていた…

「な、なんとかギリギリ大丈夫。」


そう言って、受けた傷口を止血する。


志麻ちゃんは制服を片手だけ脱ぎ、下に着ていたシャツの袖を切って俺に渡した。

止血をしろって事だろう。


かすり傷だからほっとけば治りそうだが、念のため縛っておく事にした。



「志麻くん!そんなやつぶった斬るのだよ‼︎」

杏先輩は相変わらず、騒いでいる。



「カッカッカ。実に面白い。どこぞのオナゴがワシを引かせるとは‼︎どれ相手をしてやろう。飛ぶ斬撃など久々に見た。」


そう言って笑い出した侍は志麻ちゃんに斬りかかる。


火花を散らし、刀と刀がぶつかり合う。

やはり腕力が違うのか、志麻ちゃんが押されている。


「刹那くん!私がこの男を止めてる間に白峰さんと一緒に逃げて!」


杏先輩は言われるいつの間にか俺の後ろに隠れていた。

でも…俺が答える先に、

「刹那くん!ここは志麻くんに任せて早く逃げるのだよ!怪我をしてる刹那くんと私は足手纏いなのだよ!」


でも…

「刹那くん早く!」

志麻ちゃんの声を聞き、俺は立ち上がり、杏先輩と一緒に道を走り出す。


「させるか!!」

侍は短刀を再度俺に向けて投げつけたが、志麻ちゃんの斬撃によって阻まれる。


「此奴、なかなか腕が立つのぉ。トラファ殿、ワシはこの娘と少々遊ぶゆえ、奴らを追ってはくれぬか。」


「ふっ。仕方ないな。どうやら君は戦士ではなくただの戦闘狂のようだな。おい。君たち…」

ため息をつき、金髪少女は何か話していたけど俺たちは無視して走り出す‼︎


侍と志麻ちゃんは刀を交えて戦っている。

杏先輩と俺は走っている。

金髪の女は1人で何か話していたが、突然こっちに追いかけてきた。



走ると怪我をした足から血が滲む。

出来れば走りたくはないのだ。

だが、敵は俺たちを追ってきている。

相手は女…

ワンチャン勝てるか。

そんなことを考えていた。


「刹那くん!後ろの女全然ついてきてないのだよ。」

杏先輩のその一言で俺たちは立ち止まった。

志麻ちゃんを2人で倒す作戦に切り替えたに違いない。


「2分程度しか走ってないのにかなり小さく見えるのだよ。アイツ歩いて追っかけてきてるのだよ。」


そんな訳はないはずだ。仮に歩いて追いかけてきているなら俺たちは相当なめられているに違いない。


「これなら刹那くんの足の手当てができるのだよ‼︎」


たしかに女は少しずつだが大きく見える。

追いかけて来ているのは確かだが、何かの作戦なのか。


体制を整えて志麻ちゃんを助けに行かないといけないし、怪我の手当てをする時間もくれるなら返り討ちにしたほうが早いとさえ思えてきた。


俺は自分の足の傷が深くないことを確認し、再度志麻ちゃんの制服で止血。


…よし、戦うか。







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