第32話 絶体絶命

爆発音の中から人影が現れた。

人影は一つ。いや。サムライが女の子を担いで追いかけてきているのが遠目にわかった。


俺たちは3人、3人バラバラで逃げれば無駄な戦闘を避けれる可能性もあるが無能力の杏先輩だけは1人で行動させれない。


「二手に分かれマショウ。ユー達はこの道をまっすぐ行ってくだサイ。正門がアリマース。正門が出たらユー達の仲間を探せばうまく逃げれマース。」


ロベルトさんはそう言って遠くに見える門を指さした。


「俺たちが正門を出るならアンタはどうするんですか?」


「簡単デーズ。仲間を助けに行くだけデーズ。追っては2人だけなので向こうも二手に分かれてくれれば、戦略半減でユー達も逃げやすくなりマース。」


200メートルほど離れたところに和服の男と金髪の女が追って来ているのがわかった。


ロベルトさんは担いでいる杏先輩を俺の方に投げ飛ばし、向きを変え走り出す。


「では、さらばデーズ。」


そういうと半裸の顔面アルパカ男は俺たち道を外れて走り出した。




一瞬振り返ると、追っては足を止めず俺たちを追いかける。


「2人ともついて来てるのだよ‼︎」


担がれている杏先輩は俺達に危険があることを知らせた。


予想が外れた。二手に分かれると思ったが狙いは何故か俺達らしい。


「あのアルパカ。ペットと思われて見逃されたのだよ。きっと。」


半裸の男がペットなんて俺はごめんだ。

そう思いながらも全力で走っていると門はもう目の前だ。


「杏先輩。うまく逃げれそうですよ!」

そう言って門を潜った。


「危ないのだよ!」


その瞬間、足に痛みが走った。

俺は杏先輩を担いだまま盛大にずっこけた。



「ギリギリ間に合ったのぉ。トラファ殿。」

「ふふふふ。さすが武蔵。よくやった。」


男女の声がゆっくりと近づく。


「杏先輩。大丈夫ですか。」

「刹那くん。私のことより足からは血が出てるのだよ!」


足元の地面にはクナイのようなものが刺さっていた。

「大丈夫です。かすっただけですよ。」


致命傷ではない。手当さえすれば先頭にも影響は出ないだろう。手当さえすればだが…


「すまんのぉ。見られたからには殺さんといえけんからのぉ。」

侍は腰の刀を構え俺に迫る。女は侍の背中から降りて侍の後ろから俺たちを観察する。


「私たちは何も見てないのだよ‼︎殺される意味がわからないのだよ‼︎」

俺よりも先に杏先輩は嘆願する。


「ワシは弱い者を痛ぶり殺す趣味はないのでな。楽に殺してやろう。」



 聞く耳を持たない侍は俺に向かって刀を振り下ろした。

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