第31話 害獣vs害獣

近くに行くと民家の大きさに驚いた。

確かに集会場というだけはあって、高校の体育館くらいの大きさはある。


『ぐぁぁぁぁぁ』

先に入った男の叫び声だろうか。

悲鳴のような雄叫びのような…。


家の外には小さなツノの生えたうさぎのような魔獣の古屋があり、俺たち3人はそこから部屋の中が見渡せる窓へよじ登り、観察した。


窓から覗くまでもなくその臭気に鼻がやられる。

中には族長らしい老人が1人、侍のような和服の男が1人、紺色のマントで体を覆っている男が1人。そして同じくマント姿の女が1人。

部屋の中には、その数十名の戦士達が倒れ、血を流していた。


和服の男は老人に刀を向け、男のもう1人が何か話しているようだった。


女は背は高くなく、腰にかかるくらい長い金髪で、倒れている男の1人を踏みつけていた。


「やばいのだy」

1番最初声を出したのは杏先輩だったかロベルトさんに口を塞がれた。


「ロベルトさん。やばくないですか?襲撃されてるみたいですよ。」


俺は少し身構えながらも、慎重に行動しようと、ロベルトさんの顔を伺った。



「ユーたち。逃げナサイ。シシウリ族は文明こそ発達してイマセンが、戦闘はかなり得意な部族デス。この人数をたった3人で倒したならかなりヤバいデス…」


ロベルトさんはアルパカながら表情は読めないが、その口調はさっきまでのふざけた感じではなかった。

「ワタシの能力で奴らの心を読みましたが…ohhhh」


「苦しいのだよ!!!!!この害獣‼︎」

口を封じていた杏先輩がロベルトさんに噛み付き、大声で罵りやがった。


牢屋の中でロベルトさんにバカにされて、口数が少なくなっていたと思っていたが、限界が来たらしい。

杏先輩のフラストレーションは爆発した。




「何者だ‼︎」

和服の男は懐から短刀のようなものを投げつけ、俺たちの覗いていた窓からそれが飛び出す。

運良く誰にも当たらなかったが、杏先輩の腰を掴みロベルトさんは窓から飛び降り、走り出す。

俺もすかさずロベルトさんを追う。


「ユーは大バカデス!!ナンデ、アナタは我慢ししないんデスカ!噛み付くなんてどっちが害獣デスカ!」


「お前に決まってるのだよ!この害獣!私に触れるんじゃないのだよ!獣くさいのだよ!」


おい。喧嘩やめろ。と言いたくなったが、そう言ってる暇はなかった。


凄まじい爆発で俺たちがいた窓というか、壁というか、ウサギのような魔獣がいた古屋ごと周囲は吹っ飛んだ。



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