第27話 見かけで人を判断してはいけない。
俺たちに話しかけてきたのは隣の牢獄にいた男だった。
牢屋と牢屋は壁ではなく、木の格子で囲まれていてあちらからこちらの牢屋はしっかり見えるのだ。
「あわわぁ。刹那くん。刹那くん。大変なのだよ。」
俺が涙目を擦っていると、
先輩は声を震わせながら、俺の肩をめちゃくちゃ叩く。
目を開けると男が顔がはっきりと見え…。
「ユー達はマトウの人デスネ。私もマトウ所属なのデスヨー。」
腰巻きをし、上半身は裸、首から上はアルパカという奇妙奇天烈な男が俺たちに話しかけていた。
「な、なんだ。アンタ。魔獣なのか。」
俺は咄嗟に杏先輩を俺の後ろに下げる。
「ノンノン。私はマトウ所属、異世界探索部隊。ロベルトその人デーズ。」
知らない。全く知らない。異世界にも部隊があるのは知っているが、誰か知らない。
「変態なのだよ! 変態がいるのだよ! 刹那くん!あわわわぁ。」
落ち着け。あわあわ言うな。
「ノン。魔女っ子ガール。私は変態でも魔獣でもアリマセーン。そして腰巻の下には、ちゃんとパンツは履いてマース。」
この顔面は能力のせいかのか、そういう人種なのかわからないが、どうやらこの男はマトウ所属らしい。
「私は異世界出身ではアリマセーン。このアルパカの顔は異世界の呪いデーズ。人のことを顔で判断するのは良くないデーズ。このミグルミ、キグルミ、全て剥がれてしまいマシタ。」
恐ろしいな。顔面アルパカなんかになったら、一生日本に戻れないんじゃないか。
一瞬でも覚醒者かと思ったが…
「刹那くん!コイツ。ヤバいのだよ。ただの変態なのだよ。アルパカ!君は早く服を着るのだよ!」
「だから私さっき、キグルミもミグルミも剥がされたって言イマシタ。服アリマセーン。そこのメーン。私にあなたの上着を貸して下サーイ。」
格子と隙間から手を伸ばし俺に服を要求する。
杏先輩は俺を引っ張って牢屋の端。
アルパカ人間と真反対側でヒソヒソと話し始めた。
「刹那くん。コイツは危ないのだよ。」
「杏先輩。俺もそう思います。」
「ヤバいやつなのだよ。」
「そうですね。」
「仮にマトウだとしても、変態にこんなところで絡んで筋肉ダルマに目をつけられても困るのだよ。無視しておくのが1番なのだよ。」
「意見が合いますね。無視しましょう。」
杏先輩がひさしぶりにまともに見えた。
というか。このアルパカは危険な匂いしかしない。
「私は臭くないデース。危険な匂いなんてするわけないデース。そして変態じゃアリマセーン。魔女っ子ガール。怖くないネー。」
俺はこのアルパカ男の違和感に気がついた。
「アンタ。俺たちの考えてることがわかるのか。」
「OH,わかりましたか?私は覚醒デース。半径30メートルくらいにいる相手の心を読むことがデキマース。」
いや。それはわかるだろう。声を発さなくても会話になっているし。
というか、心を読むなんて、コイツかなり強いんじゃないのか。
範囲もかなり広いから、多分フィフスレンジなんだろうな。
「私の力は弱いデース。シカーシ、能力とってもとっても強いデース。ここから脱出するの手伝うことデキマース。」
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