第26話 蛮族はすぐ殴る。
「動クナ。止マレ。異界ノ人。」
獣の皮で作った服を身につけ、頭には猪の様な牙のついた仮面をつけ、槍や斧、棍棒を持った人間が5人。
俺たちは囲まれていた。
「はーい。止まりまーす。」
そう言い、俺は恐る恐る両手をあげる。
どう見てもやばい。
ネフロントの街が中世なら、こいつらは原始時代のような格好だ。
異世界の言葉なのか、部族の言葉なのかわからないが、彼らはボソボソと話している。
一触即発なのは空気の読めない人間でもわかると思う。
このバカな俺の先輩以外を除けば。
「刹那くん、彼らのカタコトの日本語でよく聞こえなかったのだよ。えーっと。モウ一度言ッテクダサーイ。」
「なんでアンタがカタコトなんですか!こう言う時にボケかまさないでくださいよ。手をあげればいいんですよ。こう言う時は。」
そう言った彼女は肩をすくめて、両手の掌を上にあげていた。
どこの海外ドラマかと言いたくなるような、その格好が俺を更にイラだだせる。
俺のツッコミが悪かったのか、先輩のふざけた態度にキレたのかわからないが、異世界人の一人が棍棒を俺の後頭部に目掛け打ちつけた。
意識はかろうじてあったが、脳震盪をしているのか、体の自由は一時的に効かない。
目の端で先輩を確認すると先輩は両手を縛られていた。
アレ…やばくないか。
一瞬最悪の事態が頭をよぎったが、俺はどうすることもできない。
屈強な大男は、俺を縄で簀巻き(すまき)にし、軽々と担いだ。
流石の先輩もやばいと思ったのか、顔面蒼白、一言も声を出さずに男達抵抗せずについてくる。
しばらくして石できた門をくぐり、彼らの村の中に連れて行かれた。
初めて行った異世界の街、ネフロントとは大違いで文明レベルもかなり低い。
田畑を耕す男どもは殆どが上半し裸だ。
靴も履いているものは少なく、多くのものが素足で生活をしている。
言葉が違いすぎて何を言っているか全くわからないが、良くないことを言っていることはわかった。
村の奥には洞窟があり、そこには木でできた四畳半ほどの牢獄が三部屋ほど並んであった。
俺と杏先輩は装備を全て取られ牢獄に突っ込まれた。
部屋の一つには毛皮を被って一人寝ているのがわかった。
木でできているが流石に素手で壊すのは難しそうだ。
「なんなのだよ。全く。殺されるかと思ったのだよ。」
檻に入るなり先輩は俺に小言を言う。
殴られた頭がまだクラクラする。
「杏先輩。俺たち死んじゃうんですかね。」
突然殴られたせいか、心が折れて弱気な発言をしてしまった。
「刹那くん。…。私がいるのだよ。なんとかするから大丈夫なのだよ!」
杏先輩は珍しくパニックにならずに俺を励ます。
「杏先輩、俺、怖かったー。」
「よしよし、よしよし、刹那くん。私も怖かったのだよー。」
俺たちは涙を浮かべ、二人で筋肉ダルマ恐怖症になりかけた。
「ウーン。その制服。そこのメーンはマトウの人ですねー。ユー達は何しにこの村に来たのデスカー?」
牢屋の真隣俺たちは変な男に話しかけられた。
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