第24話 ゲテモノほど美味い

肉が焼ける香ばしい匂いにつられて、俺たちの腹の虫が泣き喚く。

俺たちは今、泉で大蛇の白焼きを調理していた。

俺が志麻ちゃんに助けられた後、俺たちは大蛇を持って志麻ちゃんが探し出した泉を拠点にした。

泉は透き通っており、飲水と食料を確保してひと段落ついていた。


「それにしてもいいタイミングだったよ。私が帰って来なかったら、刹那くん消化されてたよ。」

自信を取り戻し完全復活した志麻ちゃんがそこにはいた。


「真島さん。いや。志麻さん。いや。志麻くん。お手柄なのだよ。大蛇の白焼きなんて初めて食べるけどとても、とってもおいしいのだよ。」


俺を見捨てたことを悪びれもせず、杏先輩は大蛇を頬ばる。

だが、しかし確かに美味い。鶏肉のような淡白な味わい。肉質も柔らかく、某番組MCなら星3つをくれるに違いないし、もしかしたら美味しさのあまり光悦の表情を浮かべた後服が飛散するかもしれない。


「二人とも、ご飯もあるし、お水もあるし、しーっかり食べて明日はここがどこか手がかりを探しましょう。きっと人が近くに住んでると思うし。」


そういうと志麻ちゃんの視線は泉のほとりの小さな祠に向いた。



「うーん。確かに人工物だ。異世界と言っても祠なんて自然発生しない。」


近くに行くと何か文字が書いてあるけど俺には読めない。

異世界の言葉のようだ。


「それはね。シシウリ様ね。」


志麻ちゃんは教えてくれた。

志麻ちゃんがいうにはこの異世界にはいくつかの魔獣に名前をつけて崇めているらしい。

ようは守り神だ。


「シシウリ様は大きな白い猪の魔獣で身体強化の能力があるから辺境の地にはよく祠が建ててあるのよねー。」


「へぇー。そーなんだ。そんな魔獣本当にいるの?」


「本当にはいるかはわからないんだけど、シシウリ様はネフロントの守り神だから、そんなに離れてないかも。」


ネフロントとは確か以前、爆弾魔と会った町の名前だ。


「シシウリ様が何か知らないけども、猪の魔獣ならきっと美味しいのだよ。刹那くん。なんとしてでも猪の魔獣を捕まえて食料にするのだよ。」


「杏先輩。取ってくるのはいいんですけど、崇め奉られるような魔獣なんて食べて変な力に目覚めても俺は知りませんよ。」


いや。まず、そんな魔獣食うなって話だと思うんだが、そこはツッコまないでおこう。


「志麻ちゃんはなんでそんな異世界の文化に詳しいの?」

俺はふと疑問に思った。


「あっ。私出身はネフロントなの。貴方達が言うところの異世界人なのよ。」


確かに高身長で美人だったので日本人じゃないと言われれば、そんな気もするが…。


「父親は日本人だし、真島志麻って名前も偽名じゃないよ。けど、小さい頃はネフロントのマトウ支部で暮らしてたんだよね。だからこっちの世界の御伽噺とか、伝承とかも少し知ってて。」


志麻ちゃんは淡々と話しだした。










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