第19話 異世界は短な存在
……ここはどこだ。
日本とは思えない巨木、変な鳴き声の鳥、
その辺の草も、石ころも、全てがでかい。
杏先輩は俺の目の前で倒れているが、志麻ちゃんは既に目が覚めていたが完全に方針状態だった。
「志麻ちゃん?大丈夫?ここどこ?」
「あっ。刹那くん。ここどこだろうね。わからないわ。多分異世界なんだろうけど。」
彼女はそう言って額に目がある鳥を指さした。
彼女の覇気のない声から俺は状況のヤバさを理解した。
「どうしてそんな元気ないんだよ?」
「刹那くん。大丈夫。けどね。もうダメよね。私またやらかしちゃったみたい。後輩引き連れて魔獣の出現調査してたらまさか自分が異世界に来ちゃうなんて…。また始末書だ…。終わった…。しかも非戦闘員の魔女まで連れてきて。」
志麻ちゃんにとって始末書を書くことは相当いけないことらしく、その責任感の強さから彼女は自責の念に囚われることがよくある。
「んー。よく寝た。」
呑気な声で目覚めたのは杏先輩だ。
スライムを発火させ、こんな状況を作った諜報人は志麻ちゃんとは真逆の反応だった。
「刹那くーん。見てみて!あそこ変な鳥がいるよ!新種だよ。頭の真ん中に目がついてるなんて私はついに新種の鳥を発見してしまったのだよ!」
走ってくる彼女を見ると疲れはさらに増した…。
現状説明と彼女が静かになると思ってここは異世界であること、志麻ちゃんが思考停止中であることを伝えた。
「それは燃えではないか!異世界なんて前戦舞台の一部しか来れないという超レアな場所ではないか。私も一回くらい行きたいと思っていたのだよ!ちょっと調査してくるね!」
「杏先輩。それは危険なのでやめたほうがいいと思いますよ。」
そう言って俺の静止を振り切って彼女は走り出したがすぐ戻ってきた。
「私の箒がいない!いない!いないのだよ!」
「箒?」
確か杏先輩は箒を持っていたが、スライム着火時にはライターに持ち替えていた。
「川岸に置いてませんでしたっけ?」
俺のその一言でさらにもう一人ネガティブな奴が誕生した。
ズッシーンっとする重い空気を纏った杏先輩は小声で終わった…と呟いている。
「杏先輩。箒なんていいじゃないですか。ホームセンターで俺買ってあげますよ。」
「刹那くん…。君は相変わらずの大バカなのだね。あれはただの箒ではなく、列記とした魔獣なのだよ。フライブルームって言う魔獣で躾(しつけ)をすれば覚醒者じゃない、私のような人間でも乗りこなせる、自慢の相棒なのだよ。」
コイツ今、覚醒者じゃないって言わなかなったか。
つまり、コイツは空を飛べるウザい魔法使いから、ただのコスプレをするうざい人間に成り下がったのか。
「とほほほ。ブルちゃん…私の相棒…。どこ行っちゃったんだよぉ…。」
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