第16話 魔女っ子は令和でも不滅



この聞き覚えのある声に、見覚えのあるフォルム。

そう彼女は俺の幼馴染の白峰杏先輩だ。

年上の魔法少女など実に残念だ。


「ニシシシシ。パンツ一丁で何やってるんだい。刹那くん。だめだよ。こんな格好で、通報にあった変質者は君だね。」


「いや。あんたさっきカップルがスライムに襲われてるからって助けに来たって言ってたでしょ。」


普段通り俺を弄り始める杏先輩は大切なことを忘れている。


「そうだ。カップルだ。カップルを見なかったかい?刹那くん。」


「カップルは知らんですが、俺は今志麻ちゃんここに来てます。」


……………………変な空気が流れた。


「刹那くん。この前私のこと好きって言ったのにもう、浮気したの!?ふざけんなよー。志麻ってあの転校してきた貧乳美人か。」


おいおいおい、どうした。どうした。

いきなり、ハイテンションになった杏先輩に驚きを隠せない。


「いや。好きなんて言ってないし…志麻ちゃんとは任務で…」


「好きって言った。好きって言った。好きって言ったもん。絶対好きって言った。言った。言った。言った。」


泣きそうになる杏先輩はただのJCにしか見えない。


「あー。言った。言った。でも志麻ちゃんは俺と任務で…」

「本当?本当に杏のこと好き?」


うわー.めんどくせー。


「あー好き好き。友達として好き。先輩大好き。」

「まぁ。そこまでいうなら今回の浮気は無かったことにしよう。どうせ真島さんも遊びだし」


いや。任務だって言ってるじゃん。話聞けよ。

この人と話すとすごく疲れる。


「遊びじゃなくて、任務よ。」


そう声を発したのは、志麻ちゃんだった。

素足だった足元には靴を履き直していた。

………………

……………………


なぜか空気が張り詰める。

突然杏先輩は俺を引っ張り、志麻ちゃんとの間に入った。


「刹那くん。だめよ。こんなチンピラ達と一緒にいちゃ。」


志麻ちゃんはチンピラではない。どちらかと言うと清楚系だ。


「チンピラとは失礼ね。貴方達まだ活動していたなんて。そんなコスプレをして、地下アイドルにでも転身でもしたのかと思ったわ。」


なんで志麻ちゃんもそんな喧嘩腰なのか俺にはわからない。


「貴方達が活動の場が減ってるのは貴方達が私たちより先に魔獣を狩まくってるせいでしょ。」


「貴方達は現場に来るのが遅すぎよ。一体どんな連絡手段を取ってるの。」


「ケータイ電話よ!」


いや、そう言う話ではない。


「なんで突然二人は喧嘩してるの?」

俺はつい口を挟んだ。


「刹那くん。もうバレちゃったけど、私は魔法少女なの。」


見ればわかりますし、学校で結構噂になってます。


「私達は、魔獣討伐連盟って期間に属しているんだけど……。」


馬鹿な杏先輩もマトウだったのか。


「刹那くん。この真島さん達の部隊はルールを破って魔獣を倒して私達の仕事を取ってるの。いわば泥棒部隊よ。」


「刹那くん。この子全くわかってないから私が教えてあげるけど、私達は大型・強敵の魔獣討伐がメインなの。この子達コスプレ軍団はこっちの世界のパトロールと中小型、雑魚魔獣がメインなの。」


「それなら、小型で強い魔獣とか、大型で弱い魔獣はどうなるの」


「それはうちよ!」

「それはこっち!」


なるほど。お互いの守備範囲が被っててよく揉めてるのか。


「刹那くんは一般人なんだから、一般人への避難誘導は私の任務なの。スライムだって分類は弱い魔獣なんだから、早くあっち行ってよ。」


「いや。俺一般人じゃないんだ…。俺もマトウにこの間入隊したと言うか…。」


腐れ縁だが幼馴染の彼女の敵対する部隊に入ってしまった俺は、すこし申し訳ないなと思い彼女にマトウに入隊したことを伝えた。


「浮気者!浮気者!浮気者!マトウは危険がいっぱいなんだよ。刹那くんみたいな、雑魚キャラがマトウに至って怪我するだけ、ぜったーいダメ。」


雑魚は合ってるかもしれないが、杏先輩に雑魚呼ばわりされる筋合いわない。


「仮に、マトウに入るのはいいけどなんでそっちのチームに入るの!プシュポン!

刹那くん、君は馬鹿なのかい。バカなのかい?やっぱり、バカなんだね。バカなら仕方ないかぁ。」


俺のことを一方的にバカ呼ばわりする杏先輩は勝手に怒って、勝手に納得した。


「刹那くんは雑魚ではないし、馬鹿でもないわ。私のパートナーを馬鹿にしないでくれる。魔女っ子さん。」


志麻ちゃんは俺が馬鹿呼ばわりされたことをちゃんと怒ってくれた。


「パ、パートナー…。刹那くんは私の生涯のパートナーよ!プ…プ…プシュポン!ちょっと目鼻口がいいからって調子乗らないでよね!この貧乳!」


杏先輩が唯一志麻ちゃんに勝てるところ、それは顔でもなく、背でもなく、尻でもない。圧倒的な乳の大きさ。乳力(ちちりょく)である!


「えーっと白峰さんですっけ?そんなに言うなら貴方、私達よりも強いのかしら。仮に私達に勝てたなら、刹那くんを貴方達の部署に転属させるよう。私の上司に伝えてあげるわ。」


「ニシシシシ。私を本気にさせたことを公開させてあげよう。但し、2対1はやめてよね!正々堂々と1対1で勝負よ!」


杏先輩は笑みを浮かべて返した。


「そーね。貴方が雑魚呼ばわりした刹那くんに勝てたら、いいわ。貴方も覚醒者なんでしょ?キャリアも長そうだし、神供くらい使えるんなら雑魚の刹那くんぐらい簡単に倒せるわよね。」


ニヤリと志麻ちゃんは笑った。


「なら私が勝ったら刹那くんを貰います。お姉ちゃんとして。」


ドヤ顔を浮かべ、なぜかこちらを向けてウインクをする杏先輩。


女同士のバトルが繰り広げられる。


「いざ、尋常に勝負よ!」


まぁ、実際戦うのは俺なんだが。

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