第11話 修行編2

11.

「刹那、頑張ってるな。」


ゴリさんだ。


「ゴリ…大輔さん。お疲れ様です。」


ゴリラの手にはバナナではなく、でかい皮の袋を持っていた。


「誰の玉袋ですか?」


「玉袋?これは皮袋だよ。こっちの水筒だ。」


そう言って俺に手渡してくれた。


玉袋といった手前飲むのがすごく嫌だ。



俺は自分の下ネタのセンスを呪った。

玉袋手渡されてこれを飲めってBLでも斬新なプレイな気がするぞ。



だが喉が渇いた。飲むしかないのだ。

ただの水なのに、めちゃくちゃ美味い。こっちの水だからなのか澄み切っている。


炭酸水でもないのに、飲めば飲むほど次が欲しくなる。天使がこの水を運んできたかのようだ。


「すごいじゃねーか。さっきの修行かなり物になってたぞ。」


「けどダメなんです。ゴ…大輔さん。光が出ないんです。瑛人がやった時はかなり光ってたのに。俺のはこんなもん。」


そう言って俺はゴリラに若干光ってる手を見せた。


「んー。それ石持ってやってみろよ。」


そういってゴリラは俺にフンを投げるかの如く、的確にフワっと石を投げてきた。

再度能力を使うと別に光らない。


「さっきと俺が来る前と同じようにやってみろ。」


えーっと目を瞑り、石の大きさ、質感を感じて……


「目を開けろ。」


目を開けると俺の手は光を纏っていた。


「すげー。ほんとに光ってる。」


そういってすぐに光は小さくなり、消えた。


「刹那は、できてるんだけどなー集中力がないんだな。慣れれば集中しなくてもできるから大丈夫だ。」


俺は地面に寝転んだ。疲れたー。けど達成感こんな何もしてないんだけど。


「今日の課題は終わったのか。んじゃ俺は帰るわー。」


「えー。そこは、部下をおぶって、仕方ないやつだなってニコるところでしょ。」


雲ひとつない空を見ながらそういうと、俺は俺の成長を感じていた。


「上司をゴリラって言ってる部下は知らん。」


ニコッと笑いゴリラは俺の方を見た。

あっバレてた。まぁ、いいんだけども。



いつのまにか寝てしまったようだ。


ゴリラは本当に俺を置いて帰ってしまったようだ。

俺も帰るかと立ち上がると、周辺に動物の気配を感じた。いや。ここは異世界、動物というより魔獣かもしれない。


 毎度のことだが手と足の震えが止まらない。

恐怖が勝つのだ。


ジャリ、ジャリ

何かが地面の砂を踏む音がする。

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