第46話 ドーンとか、ズドーンとか、ドカーンとかはちょっと。。。

その晩、家に帰ると、二人から滾々と説明があった。幼児に分かるように、簡単な単語を使っての説明であったが、まとめると


・ お父さんもお母さんも昔はかなり有名な魔術士であった。

・ 込み入った事情があり、二人は故郷を捨て、辺境の田舎まで逃げてきた。

・ 強い魔力適性があり、優秀な魔術師となれば、兵士として魔王軍に立ち向かわなければならない。

・ 小さい子供のお前にそんな危ない事はさせたくない。


こんな感じだった。さて、そもそも俺の目的は魔王軍をせん滅することなんだが。。。両親にも事情があるだろうし、もともと魔術師なんだったら、人間の体での魔力の使い方を教えてもらおうかな。


「分かったよ、父さん、母さん。でも今、この世界って魔物とか魔王軍とかあぶない生き物がいっぱいいるんだよね?村が柵でおおわれているのは、魔物が入ってこないようにするためでしょ?自分の身が守れるようにはなっておきたいなぁ。」


「それはもちろんだとも。でもお父さん、この前お前の火魔術の跡を見たんだけど、あれはおそらく高レベルの火炎槍という術式でな。。。普通は高度な教育の下、何年も修行を積まないとあんな風にはならない。。。」


「・・・そうねぇ、私も小さい頃は天才やら神童やらともてはやされたけど、あんなレベルの火炎槍は。。。ねぇ、ユーノス、あなたが何であんな魔術が構築できるのかわからないけど、大きすぎる力は時として大きな不幸や混乱を巻き起こすの。。。


お父さんとお母さんも何年か前に色々あって、ようやくここでお父さんとあなたと一緒に、幸せな生活ができているわ。


あなたはその大きな力を制御することからまず勉強しなさい。その後の事は大きくなったあなたが決めればいいと思う。


あなた、それでいいかしら?」


ユーリヤは息子に話しかけながら、ノクタにも息子の教育方針を伺う。


「そうだな。。。ユーノス、今お前には難しい話に聞こえるかもしれないが、まずはお前がお前らしく、自分の力を理解して、それを使いこなすことからだな。


これからちょっとづつ交代で俺たちが教えるから、まぁ、ドーンとか、ドカーンとか、ズドーンっていうのは時と場所を選んでなやろうな。」


良い人たちだ。。。俺の力の異常性にある種の疑念を持ちつつも、自分たちの子供として真っ直ぐに、正直に俺に向き合ってくれている。いつかこの人たちには俺の事を話さなきゃいけないだろうな。


「分かってるって、父さん、母さん。心配しなくても派手なのはここじゃしないから。加減の仕方と、術式の種類を教えてくれたらちゃんと相談しながら練習するから。」



次の日、午前中の合間にノクタは火魔術の種類と、氷魔術の制御を教えてくれた。火魔術は火炎槍の他にも、初級段階の火炎弾、範囲攻撃である火炎域などがあり、基本的にはこれらの魔力量を大きくすれば、上級魔術になっていく。


氷魔術は火炎魔術と基本的に逆の術式を構築すれば良い。火炎は分子を振動させ、活発化させる、氷は分子の動きを緩慢にし、空気中の温度を下げて空気中の氷をかき集め、それを氷弾とするか氷槍にするか、氷の中に固めて閉じ込める氷棺という術式も教えてくれた。


なるほどなるほど、と思いながら、魔力を高め、術式を発動させていく。術式自体は全て教えられた通り、問題なく発動できるのだが、問題はその大きさだった。


火炎弾や氷弾はともかく、火炎域はテニスコートほどの草原を焼き尽くし、氷棺は目標とした大木を氷漬けにしてしまったり。。。


これでは子供が高威力の銃火器を振り回しているのと変わらない。魔術の種類を教えるつもりが、危険度を増しただけの結果となり、ノクタの顔は蒼白となり、次の日から制御中心のレッスンとなった。午後からユーリヤのレッスンであったが、午前中のレッスンの結果を聞き、ユーリヤにこっぴどく叱られるノクタであった。

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パラレルワールドナイト・イオン   エレぇ人(神)にゃ逆らえねーからな、なんたって主神様だもんな。そんで俺はなにすりゃいーんだ?から始まった世界の安寧秩序化プロジェクト(本人知らず)。 @akasata0202

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