第45話 Four years later, and his first magic


目を開けるとそこはロウソクの灯りだけの薄暗い部屋だった。何やら父親と思わしき男がギャースカ騒いでいるし、母親らしい女は額と頬に汗を浮かべ、微笑みながら俺をだっこしている。どうやら生まれた直後の様だ。さて、それでは恒例のを一発。。。


「オギャー、オギャー、オギャー――――・・・」


その後、この子はいくら乳を吸っても吸い足りないようだ、とか、やけに体が大きいとか、話してることが分かってるみたい、とか、前世で言われた一通りのことを聞き、俺は成長していく。そして4年の月日が流れた。。。



「おはよう、ユーノス。顔洗って、ごはん食べようか。」

ベッドから出て、台所に行くと、今世の父であるノクタが食卓から声をかけてきた。ノクタは農夫らしく、毎日手や顔、服などが農作業で土まみれだ。金髪、碧眼の大柄な男で体つきも筋肉質で締っている。体つきのわりに優しい顔をしており、若いころ(といってもまだ30歳らしいが)はさぞモテたのではないかと思う。


「おはよう、父さん、母さん。」


「おはよう、ユーノス。さぁ、スープができたわ。早く顔を洗ってらっしゃい。」

母親の名前はユーリヤ。髪色は濃銀、黒目、ノクタよりも背は低いがノクタが大柄なので、女性としては背が高いのではないかと思う。年齢は20代前半といっても通用しそうだが、27歳らしい。


二人とももともとの肌色は白かったのだろうが、日頃の農作業のおかげか、健康的な小麦色に焼けている。


朝食を食べた後、俺たちは畑へと向かった。貧乏とまではいかないが質素な生活の農家暮らしで、この頃俺は毎日父親と母親の農作業の傍ら、気や魔力の修行に明け暮れていた。


前世で人間の体での気の使い方を習得したおかげか、気については特に問題なく使えることは分かっているので、魔力の操作に修行のウエイトを置いた。


魔力とは魔素というこの世界を構成しているエネルギーを如何に保持、出力できるかの能力を示す。電力と電気の関係に近いかもしれない。魔素が無ければ魔術を構築することはできない、地球やアースは魔素が無いので魔術は使えないという事になる。基本的に魔力は本人の資質によるところが大きく、その資質は親からの遺伝や突然変異によるものが多いらしい。


そんでもって、俺の魔術の資質なんだが、どうやら普通よりもかなり高いレベルにあるらしい。魔力量は生まれて暫くしてから、この世界の神父に、オーブという水晶玉をかざされ測定されるのだが、俺の魔力量は王宮魔術師レベルのそれと近いらしい。ノクタとユーリヤはそれを聞いたとき、上辺は喜んでいたが、微妙な顔つきをしていた。なんなら神父にこの事は極秘扱いにしてくれとお願いしていたが、まぁ色々理由はあるんだろうし、その理由も後々わかるだろう。


この世界の魔術は自分の体内、また大気中にある魔素を操作して発動するかによる。魔素の流れについては何となくやってみたらコツをつかめたらしく、ある程度操作はできるようになった。後はどうやって発動するか、だよなぁ。。。


そうやって、体内の魔素をぐるぐる回したり、気と混ぜ込んだりしているうちに、発動を試したくなった。そうだな、試しに畑の隣にある大きな木に目掛けて火を放ってみよう。


そういえば魔法はイメージが大切なのよ、とユーリヤが教えてくれたな。


よし、まずは体内の魔素を指先に集中・・・、魔力により指先周りの元素を振動させ、加熱する。。。よし火が点いた!加振し続け、且つ発火範囲を絞って、そして木目がけて軌道を設定して、、、発動!


次の瞬間、轟音が轟き、木の中心に穴が開いた。穴の断面は黒く焦げており、テカテカと光っていた。。。


急激な魔力の高まりと、轟音、木の焦げた臭いと、大穴の空いている木。そして汗を流しながら素知らぬ顔をする息子。。。


「・・・やっぱり俺たちの血と才能を引き継いでるよなぁ・・・何となくそんな予感はしてたけど。。。」


「・・・そうね。。。さぁ、どうしましょうかしら。まぁ嬉しいには嬉しいのだけど。。。何とも言えないわね。。。」


俺にどう話したらいいのかわからず、とりあえず、目立つことは控えなさい、と言われた。次からはもう少し控えめに練習しよう。

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