第44話 しょうがねぇなぁ・・・
「ハーイ、イオン君、久しぶり、元気してた?」
気付けばそこに純白のシンプルなドレスを身にまとった女神がいた。年の頃は一般的な人間でいう20代半ばごろ、大きな目の中の瞳はブルーに輝き、絹のような濃紺の髪は腰のあたりま伸びていた。
うーん、ミッちゃんに罪はない、罪はないが、なんだこの感情は。。。どうにも納得がいかーん。くそ、次こそは何とかオヤジへの嫌がらせを何とかしなくては。。。まぁ仕方ない。
そうだ、次天界に戻るときの楽しみにしよう。前向きに、ポジティブに。
「・・・あぁ、ミッちゃん、久しぶりだね。オヤジとはある程度話をしたし、何やるかも大体わかるよ。まぁでも詳しい話を聞きたいかな。」
「相変わらず話が早いねぇ、君は。まあ私はバッタバッタしてるよ。でも今は天界の力を借りないとどうしようもないねぇ。」
諦め気味のミッちゃんは足をトントンとさせながら右手でほっぺたをポリポリとしている。
「んで、この世界、どうやばいの?」
「あー、うん、えーとね。。。私ほら、人間が何かに立ち向かって一致団結する姿が好きなのね?ホラ、絶望の淵に立たされてから希望の種を見つけて再度立ち上がったりとか、青春展開ってヤツ。」
いきなり、自分の好みを語りだしたミッちゃん。自分の世界がヤバいっつてんのに何が言いたいんだ?
「フンフン、それは分からんでもないけど、この世界がやばくなった理由とどうつながるんだ?」
ミッちゃんは俯きながら小さい声でぼそぼそとした小声で説明を続ける。
「・・・それでね、私の世界では人間に対する明確な敵として、千年くらい前に、魔物を作ったの。獣とか虫とかが魔力をまとって強くなったみたいな。。。その魔物がいつの間にか進化して、統率を取るリーダー的な魔物が出てきたり・・・」
なにやら怪しい展開になってきたな、オイ。
「何時の間にか魔物が軍団みたいなのを作って、人間の村とか街を滅ぼしたりとか・・・」
なんだか頭が痛くなってきた。原因はコイツの趣味から始まったんだな。。。
「その内、魔物のリーダーの中で魔族と呼ばれる知能が高くって強い奴が出てきて、いつの間にか魔王って奴が世界征服に乗り出して・・・。
で、今人間が6割くらい滅ぼされちゃってて、世界存亡の危機ってヤツ?アハハハハ・・・・」
「アホかぁーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!何考えてんだ、テメー!!!人間に力を与えるなり、魔物の力を削ぐなり、何なりとできただろうが?」
余りの管理能力の欠如ぶりにイオンが怒号をあげた。いつの間にか地に膝をつき下を向いて泣きながら説明するミッちゃん。
「私も頑張ったんだもん。人間に特殊な能力を与えたり、魔物の住んでるところに地殻変動を起こして滅ぼそうとしたりしたんだけど、いつの間にやら出てきた魔王が凄い優秀で、こっちの手を先に読んでて、対策を打たれちゃうの。。。」
ハァーーー、何か俺最近ため息ばっかだな。。。つけ入る隙があったからこんなんなったんだろうけど、つけ入る隙を見つけて暴れる奴らも悪いからなぁ。。。
しょうがねぇなぁ。。。なんか「しょうがない」率もスゲェ高くなってるなー。あー、蝶とか玉若とか仮面衆の皆元気かなー。この仕事終わったら一回シンちゃんにお願いしてアースを覗いてみよう。
「まぁ、アホかとは思うけど、やる事やっちゃうか・・・。とりあえず、行ってくるか。転生先は俺が身動き取れない幼年時に死ななきゃどこでもいーや。
あっ、低所得過ぎて小さいころに修行できないとか、不健康すぎてすぐ死んじゃうとか、そういう極端なのはやめてくれよ。適度に時間のある普通の暮らしが10年くらい続けることができれば良い。」
「わがった。。。。お願い、だずげでぇ・・・・」
と縋りつくミッちゃん。涙と鼻水がダダ流れで俺のズボンにしがみ付く姿は女神の威厳など一切ないアホの子の姿そのものだった。
しょうがねぇなぁ。。。あっ、また出た。もう口癖になっちまってるのかな。
分かった分かった、できるだけやってみるよ、と縋りつく女神を片手で引きはがすイオン。とりあえず行ってみっか。
「転生先は任せたぞ、とりあえず行ってくるわ。」
そう言って俺は下界に降り立って行った。サッサと終わらせてガイアの人間をなんとかしてやんねーとな、という思いと、早く終わらせてオヤジに一発食らわせてやりたい気持ちが半々くらいの気持ちのイオンであった。
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