第42話 Oh my Fxxxin' God/Father!!!

目が覚めるとそこは狭く薄暗い、石造りの地下牢のような部屋だった。イオンの手足は頑丈な金属で固定され、一寸たりとも自由に動かすことができない。


「目が覚めたか。いいか、落ち着くんじゃよ、冷静に、冷静にな。」

目の前には主神である父親、何やらかなり少々グッタリしている。先ほどの親子喧嘩によほど体力を使ったのか。


「クソ、主神のクセに手加減無しか、卑怯な。」


「ハァ、すまんすまん、説明せずに放り込んだのは悪かったわい。でもあの時も落ち着いて会話もできんかったし、今回もコレじゃろ?一回落ち着いて話をせんかい。」


「・・・ふぅー、落ち着け俺。。。怒りを鎮めろ。。。カームダウン。。。頑張れ俺。。。


・・・分かった、オヤジ。まず俺の目的は、暫く、そうだな、少なくとも200年は天界でノビノビ静養することだ。


ノビノビ静養とは、避暑地でのBBQパーティ、湾岸リゾートでのフィッシング、観劇や、任〇堂、プレ×テなどのゲームなどなどを天使コンパニオン20人のサービスで受ける事だ。


その合間合間、ついでに主神であるオヤジの説明を聞きたい。」


キリっとした真面目な顔で答えるイオン、呆れる主神。


「アホかお前は。」

サラッと返す刀で、主神は続ける。


「よいか?イオンよ。お前も先ほどの転生で気付いた様に、今いくつかの世界が神々の政争に巻き込まれ、その世界の人間がたいそう苦しんどる。今回は神魔の連中が悪さをしとったんじゃが、我ら聖神の連中も同じような事をしとるんじゃよ。


ワシのような聖魔様直轄の神は、ある程度公平にバランスを保ち、ジャッジをしていかなきゃならんのよ。


ここまでは良いか?」


「俺がそのバランサーなり救世主なりになる必要性がない。そもそもオヤジの息子である俺が直接介入するのは良いのか?」


「別にワシの息子だからって構わんじゃろ。二世がハバを利かせて何が悪い。


・・・というのは半分冗談で半分本気なんだが、実は人間界への転生はそれなりの「格」というか、神気の量が必要でな。そんじょそこらの神では転生ができん。下手すりゃ転生後に人間の魂になってしまうのじゃ。そうなるともう天界に戻ってこれん。」


「だから、俺である必要ねーじゃねーか、って言ってんじゃん。俺にその「格」があるのもビックリだけど、俺でその「格」があるんだったら、他にもたくさん「格」を持ってる奴らがいるんじゃねーのか?」


「フフフ・・・良い事を教えてやろう。この天界には大体9百万柱の神がおるが、天界から人間界への複数回の転生に耐えられる神気を持つ神は10柱も居らん。複数回の転生に耐えるだけの神気を養うには、長い長い時間をかけて修行を行う必要があるのじゃ!!!」


あっちの方向を見ながら滔々と熱弁する。その後、ムカつく顔をクルッとこちらに向け説明を続ける。


言葉の端々にまさか、と思いながらとりあえず話を聞く。この時点で俺の怒りは4合目を迎えていた。落ち着け、俺。きっと良いことある。。。


「神気も魔力も、呪力すらも拘束された神の力が全く発揮されない世界において、辛く、悲しく、おぞましい経験を気が狂わんばかりに繰り返し、終わりの無い絶望を幾億回と経験するのが最良の修行方法なのじゃ!!!」


再度あっちの方向を見ながら、立板に水が如く説明が続き、語り口調にさらに熱が入る。


無理だ、やめろ、その口を塞げ。。。俺の怒りはもう8合目を超えた。


「ワシもかつてこの修行をやったことがあるが、2,000年でギブアップじゃ。わしの魂はどんどん穢れていき、あと一歩で天界に戻れんところじゃったワイ。そんな修行にお前の魂は全く穢れず、1万年まで持ったんじゃ。これは驚異的な事なんじゃよ。誇れ、我が息子よ!!!」


キリっとした顔で、顔をこっちに向ける父親。もう駄目だ、俺の怒りは臨界点を突破した。


「・・・という事はアレか。。。餓死したり、突き殺されたり、猛獣に食われたり、火炙りにされたり、結婚式の日に爆撃されたり、過労死したり、ホームから突き落とされてバラバラになったり、ウイルスにやられて出血死したり・・・


あー、まだまだおぞましい、思い出したくもない経験が腐るほどあるぞ。。。


それらは全て実の父親によって、その修行とやらに仕組まれていて、尚且つ、本人が2,000年でギブアップしているくせに俺には1万年も経験させたってことだよな?」


「そーなんじゃよ!!!普通の神ではとても耐えられんよーなことをお前はやってのけたんじゃ!!!さすが我が息子じゃ!!!これで安心してお前に後を任せられるワイ。。。」


バキバキと音を立てて破壊される俺の手足の枷。

天界で加工された最高硬度の金属が!!!と衝撃を受け慄く主神。


その後、この狭い部屋で何時間にも及ぶ親子の肉体での語らいがあった。巨大なパワーを持った二柱の本気の打撃により天界の大地は揺れ動き、空気が振動し、海では津波現象が生じたとの事だった。

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