第40話 あの人らしいね・・・
数時間後、事務員の天使を使いにしてシンちゃんを別の部屋に呼び出す。正直あの部屋で話はしたくない。アイツ本当に神か?と疑わざるをえない惨状だった。
明知のいる部屋で3人集まり、話を始める。まずは事の経緯と、顛末からだ。
「分かった、早速今夜の夢枕に立てるように段取りしよう。こちら側の事情で人間に迷惑をかけてしまったこと、この世界の神として謝罪させてもらう。申し訳ない。」
「いえ、頭を上げて下さい、神様。正直、思うところが無いわけではありませんが、殿と過ごした時間、家族と過ごした時間、仲間と過ごした時間・・・辛い時も嬉しい時もありましたが、振り返れば私の人生は輝きと喜びに満ちておりました。」
「そう言ってくれると助かる。とりあえず、今夜の夢枕にはお前の思いを家族に伝えてくれ。後、家族は俺の部下・・・そうだな、正吉の指示に従うように言ってくれ。」
「承知いたしました。」
「後は俺の方だな。まぁ、蝶と玉若には明知の事情を伝えるか。玉若には、そうだなー・・・ちょっと身を隠してもらおうかな。。。アイツにゃこの国とこの世界を当分の間任せなきゃいけないからな。」
という事で、玉若についてシンちゃんと話をする。アイツの今の能力と為人、それと今後について、だ。
それから数時間後・・・
「というわけだ、蝶、玉若。不甲斐なく死んでしまった俺の代わりに楽しく生きてくれ。」
唐突に夢枕に立ち、何も無かったかのように滔々と説明し、ニッコリと笑う旦那(父親)。最初は目に涙を浮かべながら話を聞いていたが、片方はだんだんと怒りだし、片方はだんだんと呆れていく様が見て取れた。
ちょっと待ったーーーーーーー、と怒り出した方がイオンに対して跳び蹴りをくらわせようとしたが残念ながらお互い思念体であるのでスルーしただけだった。
はぁ、全く以てヤレヤレだね。。。と呆れだした方は肘をついて寝転がりだしてイオンに話し始めた。
「とりあえず、ねねさんを除く仮面衆の皆と僕が雲隠れすれば良いのは理解できたけど。理由も何となく分かるし。あと、明知さんの家族の事は直ぐに手配しとくよ。」
「何で私らが雲隠れしなきゃなんないのよ。というか、勝手に死んじゃわないでよバカーーーーーーーーーー!!!」
スルーするのが分かっていても、涙ながらに攻撃してくる蝶が愛おしくてしょうがない。
数十分説得を続け、ようやく落ち着いた蝶と玉若に話を続ける。
「まず俺が死んだことで、家臣たちが混乱するだろう。中身はこんなのでも、外見は幼児の玉若を利用し、一波乱起きるに違いない。たぶんサルあたりが台頭してくるんだと思うが。。。玉若や仮面衆は過剰戦力でだからな、それにあいつらも使いにくいだろ。
ここらで明知に討たれたことにして、仮面衆はスッと時代に消えるのが良いだろうな。
そのあたり、蝶と玉若、正吉から上手くサルとタヌキに説明しておいてくれ。アイツらなら理解するだろ。
んで、サル政権だが、ねねの具合はどうだ?端的に聞くが、今のねねは子供が産める体なのか?」
「・・・よく見てたね、父さん。残念ながら気が枯渇寸前の僕の治療では命を繋ぎ留めるのが精一杯だったよ。内臓、特に内臓性器周りは修復できなかった。。。」
目を閉じねねを慮り、怒りと哀しみで肩と腕を震わせる蝶。
「・・・ねねの事はサルに任せておけ。アイツならねねを一生大事にしてやれるはずだ。お前たちはたまにねねに会いに行き、世間話やサルの愚痴なんかを聞いてやってくれ。
んでだ、サル政権が終わりを迎えると次はタヌキが台頭してくるはずだ。アイツはスケベだからな。子供をそこかしこに作りまくるはずだ。性格的にも内政タイプだから、政権は長期化するというのが俺の読みだ。
言った様に俺の望みは人間が人間らしく、笑って、泣いて、楽しく人生を送れる世の中を作り、長く長く維持することだ。
てなわけで、仮面衆はサルとタヌキの家の守護神としてあいつらを影から見守る役割をして欲しい。調子に乗って無茶するような奴が出てきたら、構わん、やっちまえ。
お前たちの業と力はこの世の平和のためにあると思いその力はお前たちが、コイツは、と思う奴らに継がせてやってくれ。それが別にお前たちの子でも構わん。」
蝶はグスグスと泣きながら頷き、玉若はしょうがないなぁ、と諦めながら受けいれた。
「あと玉若、お前の力はちょっと度が過ぎてるから、力を受け継がせるのは注意しろよ。お前の子(俺の孫か)だから大丈夫かと思うが、とんでもない怪物に継がせると、またこの世界が混乱するからな。いいな、約束だぞ。」
「はぁ、死人のくせにうるさいなぁ。分かったよ。さすがの僕でも自分の力の異常性は分かってるから、そのあたりは注意する。」
簡単な指示をし、ひとしきり家族の話をしながら、時間が経過していく。。。もう行かなくちゃいけない。
「・・・もう時間らしい。」
「そうなんだ。。。まぁ破天荒な人なんで忘れようがないけど、お父さんの教えてくれたことは忘れないよ。」
「まだまだ涙が枯れそうにないわ。でも私は玉若と、もう一人、おなかにいるこの子を守らなくちゃいけないから。。。」
えっ!?と驚くイオンと玉若、涙目ながらニコリと笑う蝶。。。
「・・・そうか、ありがとう、蝶。二人を頼むよ。玉若、お前が兄ちゃんなんだから、弟か妹の世話をしっかり頼むぞ。」
「了解。」
「死んだら会いに来いよ、この世の神にも言っとくし。じゃ、あの世でな!」
そう言って、イオンは夢から消えていき、二人は同時に目が覚めたのだった。
「なんか・・・」
「ほんとに・・・」
「「あの人らしいね」」
と、二人は泣き笑いながらイオンへの愚痴を言い合うのだった。
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