第36話 敵は本納寺にあり!

報告のあった10日後、六三四の国目掛けて俺たちは進軍を開始した。サル、タヌキを筆頭に幾つか軍勢を見繕い、仮面衆を伴っての攻勢。


但し蝶、ねね、それと玉若は教の都で居残り。いくら強いつってもさすがに4歳の幼児を行軍に伴えない。それとハゲは朝廷への報告と他に山積している業務があるとのことがで、自ら居残りを申請してきた。


六三四の国は穢土氏という豪族が支配しているが、穢土氏そ勢力そのものは大した問題ではない。所詮田舎の大将というのは事前にわかっており、むしろどんな条件で俺の支配に入ろうかを画策しているらしい。



六三四の国に入り、穢土氏との交渉が始まる。案の定、穢土氏は好条件を引き出そうとあれやこれやの提案を始めるが、そのあたりはサルとタヌキに一任した。仮面衆と俺たちはデバイスが設置されているであろうポイントの実地検証を行った。とりあえず仮面衆達には敵の仙人の法具を破壊しなければならないとだけ伝えている。


昼過ぎに現地到着し遠くから確認すると、報告通りオンボロそうな神社の周りに民家が30軒ほどの小さな集落だった。仮面衆と共に現地の地形、家屋の配置を確認しつつ、再度拠点に戻った。


拠点に帰ったころには穢土氏とはおおよその決着はついており、接待を受けているところだった。今晩、闇に紛れてデバイスを探しに集落を探索するから早めに切り上げないとな。と思っているところに穢土氏が絡み始めた。めんどくさいので何杯も何杯も酒を多めに注いでやり、酔い潰してやった。その後、ササッと接待を切り上げ、深夜、俺たちは出発した。


「夜の寺は不気味っすね~、御屋形様」

「何言ってんの。延歴寺に比べりゃ神聖なもんだ。」


「それにしても早く帰りたいものですな。こんな田舎では明かりも少ないので読書ができませぬ。」

「源三、お前本ばかり読んでるけど、彼女とはうまくいってるのか?」

「私の彼女も読書が人一倍好きでして。。。家では二人して本ばかり読んでおります。お互い不満もございませぬし、大丈夫ですよ。」

「全く、何を好き好んで付き合ってんだかわかんねーな。」



現地到着後、俺たちはまず各民家に侵入し、それとなくデバイスのありかを調べたが、特に気になるものはない。むしろそれより別の事、空の民家が目立つのが気になる。


さておき、やはり神社が怪しいということで境内の方に向かうと、異様な気が感じられた。


(近いぞ、各自、隊形を崩さず警戒。)

(((承知。。。)))


本殿に向かい、中に入ると、神体らしき鏡の様なものからその異様な気が放たれている。こいつがに違いない、と確信しクナイで破壊した。


慎重に近づき、触って確認した結果、間違いなくデバイスだと確認したが、やけにあっさり破壊できたことがやはり気になる。何か嫌な予感がする。。。


まて、違和感を整理しろ。。。

・ デバイスがこの地にあることが判明したこのタイミング。。。

・ 教都と六三四との距離。。。

・ 民家の半分が空。。。

・ デバイスがあるこの地になんの異変もなかった。その報告をしたのは。。。



・・・マズイ!!!そう思った俺の足は瞬間的に、蝶と玉若の下へ駆け出していた。


(蝶と玉若が危ない!!正吉、雷太は遅れてもいいから俺についてこい。源三は眠ってる集落の者を叩き起こし、空家の住人の素性を念話で直ぐに連絡!急げ!!!)


しくった!!!蝶とねねがいるとはいえ、玉若自身も強いとはいえ、俺たちが距離を取るべきではなかった。今敵にやられると一番嫌なことは、俺自身の命が奪われるのもそうだが、後継である玉若の命を奪われる事だ。俺への襲撃を諦めた敵はデバイスを囮に玉若の命を狙ってきた。


俺は神気の出力を増し、それこそ跳ぶ様な勢いで領地に駆けて行く。正吉と雷太も懸命に付いて来ようとするが、もうかなりの距離が開いていた。


そのころ、源三から念話での連絡が入る。


(空屋となっている家は古くからこの集落に住んでいた人たちとの事。田舎なので近所付き合いも当然するが、どこか距離を置いていたように感じられたとのことです。あと、大木を切り倒したりとか、ケガがすぐ直ったりとか、どこか人間離れした所があったと言っております。子供も入れて人数は20人弱との事。もう念話が不可能な距離になります。私も後で追いつきます。ご武運を。)


(了解、ありがとう。サルとタヌキに連絡し、こっちに合流してくれ。)


報告を聞き、確信を得た。神気開放により鼻と目から出血しつつ、愛する妻と子供を守るため、全力で駆けて行く。その速さおよそ200km/h。



「あのハゲ~~~~~~~何かやらかすと思ってたら、まさか私たちを狙うとはね。クソ~~~、あのハゲ~~~、もっと虐めておいたら良かったわ!!!」


「母さん、それはハゲは良いとして、ちょっとまずいよ。一般兵は明知の私兵が300くらい、気を使う敵は15、6人くらいいるかな。質はともかく量は負けてるから、逃げ回るしか手がない。早く父さんと連絡つかないかな。」


「そうですね、それにしてもあのハゲ、私の事をイヤらしい目で舐め回すように見てると思ったら、こんなこと考えてるだなんて。本当にいやらしい。それにしても私の旦那は妻の危機に何してるのかしら?!!気を利かせて早く助けに来なさいよね、全く!!!」


・・・周りにいる女の人がこんなのバッカリなんて、父さん大変だなぁ~~、と思いながら、玉若は父に念話を送ろうと試みているが、いかんせん遠すぎて繋がらない。


仕方なく仮面衆達の間で事前に決めていた隠れ場所で息を潜めていた。



そのころ、鎧兜に身を包んだ武将が女、子供をまじえた怪しげな集団と軍勢を率いながら、目的地に向かって進軍していた。


「敵は本納寺にあり!」

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