第31話 Nnh~~~, no choise, can you?・・・


あの悲惨な浄世日宗騒ぎから約1年、俺は勢力範囲の拡大に勤しんでいた。


「てぇーーーーーーーーーーーーー!!!」

耳をつんざく様な1万丁の銃声、バタバタと倒れていく竹田の騎馬侍と足軽達。


「殿、これはもう戦になりませんね。」

「うむ、というか、もう戦ではないな。これ以上やると虐殺になってしまう。正吉、早々に相手に投降を呼びかけろ。というか、竹田の大将も一回で分かってくれよ。。。」


以前国友に頼んでいた鉄砲は量産化され、その総数はもう既に2万丁を超えていた。国友村と呼んでいる雄張国内の秘密の場所で、人数を制限して鉄砲を量産しているので、他国に技術が漏れる恐れはない。


職人や技術者は主に戦で身寄りのなくなった戦災孤児や、未亡人達だ。もちろん浄世日宗の被害者たちも何十人とそこに加えた。彼らには衣・食・住を与え、技術を与え、職を与え、安心を与えているので、忠誠心は凄まじいものがあった。一度土産を持って行ったら頭を地面にこすりつけ、泣きながら感謝された。良いもん作ってくれてるんだからこっちが感謝したいくらいなんだけどな。


そうこうしている内に投降を呼びかけた竹田からの返書が返ってきた。なになに・・・。


[武士の作法も精神も知らん愚か者め。卑劣な手を使い正々堂々と戦えない卑怯者になど誰が投降するか!!!我ら最後の一兵まで戦い抜いてやる、アホー。]


「・・・クソが!!!自分の意地に家臣の命を巻き込むんじゃねー!!!サルーーーーーーーーー!!!竹田のバカは今どこだーーーーーーーーーーー!!!???」


「ハッ。既に城に籠り、来る当てのない援軍を待っている始末です。」


「ボケが!ここまでノータリンとは思わんかったわ!!!タヌキーーーーーーーーー!!!大砲と狙撃手を用意しろ!!!」

遠くにいたタヌキ顔の人の良さそうな少年が、血相を変えて、「はいーーー、ただ今―――――!!!」と威勢の良い返事を返していた。


コイツは松多比良 元康という最近頭角を現してきたガキだ。昔は今河家に人質に取られていたが、俺が今河を討取ってから解放され、そこから配下となっている。ガキだガキだと思っていたが、みるみる成長し、最近ではサルと同様俺の片腕の役割を果たすようになってきた。


「ハゲーーーーーー!!!勧告書の再準備と降伏条件、もう一回見直しといてくれ。」

「はっ、承知しました。」

ハゲこと明知は、先の浄世日宗騒ぎの後始末において、かなりの手腕を発揮したので、幹部として取り上げている。実際能力も高いし、周りの評判は良い。元々前の将軍に使えていた武官やら文官やらで、武力だけではなく多方面の知識を備えていて頼りになるヤツだった。


サル、タヌキ、ハゲが表側、仮面衆が裏側の側近という事で俺の統治は進んでいた。


「大砲、てぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

落雷の如く巨大な砲音と、破壊音が響き渡る。


鉄砲がこの国に来てから間もない時代、これだけの数の鉄砲は戦のシステムを大幅に変えた。しかもこの鉄砲は俺の前世の知識が幾分か取り込まれた特別製、弓、槍、刀に騎馬戦など1,000年前から変わらん戦のシステムなど話にならん。戦初日から戦意を潰され、敵たちは次々と投降していった。


既に中部から関東、北陸、関西、中国地方に至るまで勢力を拡大しており、今この国の約50%を掌握し、俺たちは統一に最も近い勢力となっていた。


その間、人材の教育や、採用にも余念がない。浄世日宗騒ぎであふれた身寄りのない子供達から本人の適正を見定め、仮面衆の下部組織を作り、主担当は本人たっての希望で雷太となった。情報攪乱、陰からの国崩し、戦の展開を有利にするなど、有能な間者は何人いても良い。


敵勢力からのスカウト、人材発掘など、政治向きの武将の獲得も同様に力を入れ続けている。他にも武中や黒多という武将など、俺が直々に見定めた奴を取込み、巨大化しつつある雄田家の領地をコントロールしている。


基本的な政策は雄張と同じ、前世での知識と経験を活かした治水、農業改革、交通インフラ整備と、税を含む法制度の見直しだ。俺の領地は治安も良く、食うにも職にも困らないので、他国からの人の流入が止まらない。この調子だ、平和に過ごす人たちの人数を増やし、カルマ値を薄めていく。


俺自身の変化もあった。。。子供だ。もちろん蝶と子供で、玉若と名付けた。将来は俺の後を継いで、この国をより良い方向に向かわせてほしい。なんとも、前の世界では何故か幸せな家庭というのは築けずにいたから(今となっちゃその理由も大体想像付くが。。。)、喜びもひとしおだ。可愛くて仕方がない。


まぁ、その子供がまさかこうなるとは予想もしなかったのだが。。。



「それにしても、俺の子だけに、気の量が半端ないな。」

「この子、母乳を飲む力が強くて、乳首がヒリヒリする~。イターイ、イターイ、玉若~もう堪忍え~。」

親の事などどこ吹く風、我が息子は黙々と母乳を吸い続けている。


余りの痛さに右乳から玉若を引きはがす蝶、「あっーーーー」と叫び、すぐさま左乳を手繰り寄せ、また吸い付く。右の乳首が赤く腫れあがっている。ひとしきり左の乳を堪能した後、


(あー、おなか一杯、母さんオヤスミー)


と声が聞こえてきて、グースカ寝てしまった。


「御屋形様、このままじゃ母乳を吸われ尽くして、お乳がしわくちゃになっちゃうよ。自前の母乳で育てたいと思ったけど、乳母を雇って。」


「う~ん、まぁしょうがないか。信頼できる武家の乳母をあと5人程用意しておくよう指示しとくよ。」


まぁこれには理由があった。玉若が蝶のお腹の中にいる時から、俺の神気を流し込んでいる。生まれてからだっこしている時も毎日毎日だ。身体の活性化を促しているから、神経、筋肉、骨、あらゆる細胞が普通の人間よりも上位の質になっている。力も強くなる分、栄養もたくさん必要だろう。


あと、俺の神気を通わせたり、意識を共有したりしているせいか、知能に関しても発達がエゲツない。生後5か月だというのにもう既に念話での会話が可能となっている。


ちなみに、最近の彼の困り事は自分でトイレに行けず尻周りが蒸れて気持ちが悪い事と、乳母達のベロベロオバーに付き合わなければならないのか?という事らしい。


なおこの事は俺、蝶、正吉しか知らない秘密となっている。


今後俺の後を継いでこの国を治めていくからには狙われる機会も多いだろうし、賢く、強いにこしたことは無い。歩けるようになったら本格的にしごいてやろう。


「ところで、明日は帝からの将軍位拝命式ですよね?おめでとうございます。」

「あぁ、あれな。式典めんどくせーけど、将軍位が有るのと無いのとぜんぜんちがうから。」


そう、俺は既に教都にいる帝を囲い、帝から将軍位を任命させようとしている。今の帝は実質的な権力は無く、象徴的な存在として奉られているが、その言葉、行動の影響は大きい。軍事的ではなく、ある意味精神的にこの国を支配していると言っても良い。その帝からこの国の軍事的支配権のお墨付きを明日いただきに行くのだ。


「御屋形様はもうすぐ天下人、息子は超人、見る限り民の笑顔は増えてっている。・・・ちょっとずつ御屋形様の理想に近づいている実感がするね。盗賊していたあの時からは考えられないわ~。」


「この国も大分平和になってきたけど、まだ片付けなきゃならん案件があるしな。ホレ、玉若も寝たこったし、二人目二人目。」


そう言いながら、蝶の着物に手を伸ばして行き、ハイハイと言いながら二人は一緒に床に就いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る