第24話 って言うか、クソだな。。。


身体は人間だが、俺の魂は神のそれと同じで、俺の気は神気と呼ばれる。仙人の持つ仙気とは格が異なるが、人間である正吉や雷太、サルはそれらの見分けがつかない。はたから見れば同じ様に見えるのだろう。


しかしながら、仙気といえども獲得には才能と努力、そして優れた指導者が必要な為、仙人は非常に稀な存在である。そういう意味でも全員が仙気を習得している仮面衆は非常に稀有なのである。


「・・・そうか、どういう攻撃の類かはお前の傷を見て大体わかったが、何故そこまでの攻撃を受けねばならなかった?お前が本気で向かえば例え仙人と言えど、そこまでやられないだろう。」


正吉は目を閉じ、目を抑えながらゆっくりと絞る様に話し始めた。

「・・・僕の相手は。。。7~12歳くらいの男女の子供達だった。。。総本山、延歷寺まで潜り込もうとしたんだけど、延歴寺の周りは少年兵で囲まれてた。。。しっかりと気配を殺していたつもりだったんだけど、何故か察知されて、囲まれちゃった。。。


集団で攻撃してきて、こっちも意識を刈り取る様な当身も当てたけど、何も無かったかのように向かってきてさ、、、彼らはおそらく意識を操られてる。。。傷や打撲、骨折もお構いなし。死兵の様に僕に向かってきた。。。


首を落とせばおそらくは止まるんだろうけど、僕にはできなかったよ。。。攻撃を躊躇した隙に自爆攻撃を受けてさ。。。


自爆攻撃の時も笑ってた。極楽浄土に行けるんだと信じているんだろうね。


あの子達、違う場所に生まれていれば美味しいものも食べれていただろうし、結婚して子供を持つ将来があったかもしれない。


御屋形様に拾われなかったら、僕はあの子たちの様になってたかもしれない。。。


僕より小さい子たちの未来が奪われるのは見てられないよ。。。


・・・御屋形様、お願いだよ。。。あの子達を助けて。。。」


・・・硏如は子供たちの精神操作をしている。純粋な子供たちは大人と違って素直で、操りやすい。。。読経や座禅時に精神操作で念を掛けているのだろう。


この戦乱の世の中だから、人減らしの為に、寺に子供を置いていく。


夫を戦で失った子連れの未亡人も尼寺に行くが、おそらく僧兵共の夜の相手をさせられて、硏如の寺に回されているのであろう。


結果、放っておいても兵は補充されていく。


クソが、クソが、クソが!!!涙ながらに話す雷太の追加報告を聞くにつれ、胸クソの悪い推論が確信へと変わっていく。



戦乱で困窮している女につけ込み、神の名を騙って子供を洗脳し、人殺しの道具に使う。


もちろん、子供の方が敵を油断させやすく、殺しにくいというのも当然計算に入っているはずだ。


分かったよ。。。


神が(俺が)直々に神罰を与えてやる。


地獄が極楽と思えるほどの責め苦を味わってもらおうではないか。


輪廻転生など許さん。未来永劫地獄の業火に焼かれ続けるがよい。



翌日から全ての予定をキャンセルし、硏如討伐に向け準備を進めていく。メンバーは俺と仮面衆5人。仮面衆皆には、雷太からの情報を共有した。皆一様に決意が漲っている。


雷太については休息を促したが、身体も回復し、どうしても懇願されたので連れて行くことに決めた。


ちよも付いてこなくていいと言ったのだが、事情を聞いて意地でも参戦すると言って言う事を聞かない。まぁ、そりゃそうか、コイツ子供好きだもんな。。。


雷太が帰還して1週間後、サルにしばらく頼む、と言付けし、俺たちは拠点を出立した。


休息を取りながら、移動する事2日、北教都にある延歴寺に到着した。


新月の深夜、星明りも届かぬ山林の獣道を駆け上がっていく。人の気配は無い。不気味に思いながら寺に向かいかなり速いペースで進んでいき、そろそろ寺が見えてこようかという矢先、寺から複数の気配が察知した。こちらに向かってくるようだ。


「?おかしい。明らかに俺たちを認識している。気配隠蔽は完璧なはずだ。。。どうやって察知した?」

「分かりません。前の来た時も、いつの間にか察知されてて。」


まずいな、このまま交戦すれば、身体能力が上の俺たちに対し、おそらく敵は自爆攻撃に切り替えるはずだ。敵がどうやって俺達を認識しているのか、それを探らないといたずらに子供の命が失われるだけだ。


「散開するぞ、各自戦闘は全力で避けろ。敵を撒きつつ、敵の気配察知能力の謎を解く。念話通信を怠るな。俺の指示があるまで、敵と適度な距離を保ちつつ、逃げ続けろ!!」


「「「「「承知しました!」」」」」」


サッと5人がバラバラの方向に散っていった。同時に、敵の動きが止まり、暫くしてから敵の手が、俺以外の5方向に散っていった。明らかに俺とまともにぶつかることを避けている動きだ。やはり何かの手段か能力で俺達を認識している。。。


何か手がかりが無いかと周囲をくまなく見まわすが、特におかしな気配や物はない。敵は俺を最大脅威として認識しており、このまま本陣に向かうと、集団で自爆攻撃をしてくるだろう。子供達の動きを察知するとその自爆攻撃自体は躱せるが、能力が分からない、得体の知れない敵に向かうのは愚策だ。


木の枝に立ち、眼を閉じ、気配感知をフル稼働しながら様子をうかがっていく。。。


戦力的に大きい、正吉、源三、雷太にはそれぞれ少年兵が約30人ずつ向かっている。ちよには60人、ねねには90人が向かっている様だ。なるほど。


「皆、敵の気配察知について少し分かった事がある。確証を得る為、少し動くぞ。まず俺はねねと合流する。他の皆はしばらく同じ動きを取れ。ねね、様子を見ながら俺の方に少しずつ近づいてくれ。」


承知しました、との連絡の後、ねねが俺の方に徐々に近づく動きを取ってきている。暫くして、俺が最大速力で一気にねねと合流する。


すると、ねねを追っていた90人の動きが止まり、その後、90人はすべてちよの方に標的を変えた。


「・・・確信した。敵は戦力の大小を見分ける力を持っている。それを以て、各個撃破戦略を取っているのだろう。平たく言うと弱い者順だ。


そして戦力の大小の判断は、気の大小ではなく、おそらく別の方法だろう。なんとなく想像はつくが、この場でそれを制御する技術を獲得するのは困難だ。ふもとまで一旦引き上げるぞ。」


指示と共に皆戦線を離脱した。少年兵の気配が寺へと戻っていく。作戦の練り直しだな。。。敵の能力が分かっただけでも良しとするか。俺はある推理を確信に変えながら、対応を考えていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る