第20話 齊藤家
政略結婚の誘いに乗り、20人程の家臣と侍女に守られ、姫が輿に乗ってやってきた。道中、こんな田舎の領主の、とか、どうやって毒殺してやろうとか、物騒な話が漏れ聞こえてくるが、かえって都合が良い。到着後しばらく、無事到着した旨、書簡をしたためさせ、齊藤の家人たちに渡して領地に返す。
到着直後に手紙を書かされ、めんどくさいだの風呂はまだかなど、ブーたれてた蝶。
障子を閉めてしばらく、天井裏から蝶の背後に雷太が音もなく降り立ち、頭を掴み180度回転させた。逞しい首から乾いた音が響き渡り、プギぃ、という声が漏れた。目が合い、うへぇと仰天した雷太だったが、その数秒後、蝶の絶命を確認した。。。
「よし、ちよ、着物着てそれらしく振舞っといてくれ。齊藤から来た侍女達には別の仕事についてもらうからこの部屋に来ることは無い。」
「御屋形様、さすがにあんなのとは結婚できませんね。首なんか僕の太ももくらいありましたよ。そりゃちよ姉ちゃんのほうが10倍マシですねー。アイタ!」
ちよの鉄拳が雷太の頭に直撃する。
「マシって何よ!!!あんなカブトムシみたいな女と比べるなんて失礼でしょ!!!」
「・・・お前ら良い性格してんなー。喋ってねーでさっさと用意しろ。」
ハイハイ、と言いながらちよは着替え、よっこらせっ、と雷太は死体を担いで処理をする。
暫くしてから、齊藤の息子の義龍の元には、正吉、源三が道二の部下、商人、蝶からの使者など、色々な者に扮して、義龍の元に偽の情報が流れ込んでいた。
・道二は一か月後には義辰様の元に兵を出すつもりであるが、先の短い道二より義辰様についた方が得なんで、寝返りに来た。これは寝返りの武将の血判状です。
・道二は挙兵に当たり、兵糧、馬、矢などの物資を買っているが、聞くところでは義辰様へ兵を向かわせるとか。。。
・慶長は先の短いお父様よりお兄様と手を組みたがっている。。。お父様と戦う場合は慶長をお兄様の味方にさせるわ。
またそのころ、道二、義辰のお気に入りの妾や武将が次々と暗殺されていた。互いの疑心暗鬼は頂点となり、不信は確信へ、嫌悪は憎悪へと移り変わっていくのに時間はかからなかった。
かくして、齊藤家の親子戦争は長良河にて始まり、戦中、なぜか偶然、それぞれの大将に流れ矢が当たり戦死したという。家臣団は何とか戦死を隠蔽しようとしたが、そこかしこで討ち死に、戦死、との声が上がり、道二、義辰の死は瞬く間に戦場を駆け巡った。
主君が死に、狼狽える家臣団が領地に帰ろうとしているところ、進軍を進めていた慶長はそのまま三濃の居城を奪い去った。
有能な人材はそのまま雄田家に迎えられ、無能や蝶を知る人材は市井の人となっていったという。蝶の輿入れからここまで約二か月、電光石火の三濃国取りであった。
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